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20代のころはよく旅をした。取材旅行も多かったが、それでも飽きたらず、休暇のたびに一人で旅をした。バックパックを背負って、列車に揺られて、行きたいところへ行く。地球のどこかを、見知らぬ街を、一人さすらう。安宿に荷をほどき、ノートとペン、そしてカメラを携えて、ゆらゆらと街を歩く。ランチは公園のベンチで鳩と一緒に。疲れたら街の教会でひと休み……。無数の駅を通過し、無数の石畳を歩き、無数の鳩とランチを分け合った。 緩くのびきった時間の中で、わたしは好きなだけ、好きなことを考えた。過ぎた時間のこと、迎える時間のこと、自分を取り巻くあらゆること。移動の列車の中で雲をぼんやりと眺めながら、街角のカフェで道行く人を眺めながら、あれこれと思いを巡らせた。一人で旅をするとき、そこには途方もない寂しさが横たわる。美しい景色を見るとき、おいしいものを食べるとき、心が動く瞬間を、だれかと分かち合いたいと思う。しかしそれができないときに心を貫く寂しさもまた、振り返れば得難い感情だった。(『街の灯』「さすらい」より一部抜粋) |
■ガラスの国、妖精のダンス(スウェーデン) ■蘇りし風景、ドレスデン(ドイツ) ■プラハ、そしてヴルタヴァ川(チェコ) ■運河と石畳の街、ベルギー・ブルージュ ■スペイン・アンダルシア紀行
■モンゴル旅日記:自費出版の復刻版 ■モンゴルの写真 ■ヨーロッパ放浪三カ月……旅のノートから。 ■やさしくて、暑くて、幸せだった、バリ島のウブドゥで描いた絵日記。 ■近くて遠い中国。カルチャーショックの旅のメモから。
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