■はじめに……インドで結婚式上げることになった理由(文章のみ)
■ついに、インド初上陸
■日本の家族も到着
■イベントその1:メヘンディー、女性たちのパーティ
■イベントその2:カクテルパーティーの夜
■イベントその3:結婚の儀式
■イベントその4:披露宴(レセプション)
■悪夢のタージ・マハル観光。そして日本勢、無事、帰国。
■インド滞在の終盤。ボロボロ新婚旅行。
はじめに。
インドの結婚シーズンは、冬だ。
4月から6月にかけての「夏季」は、平均気温が40℃から50℃に達することもある猛烈な暑さで、空気は乾燥しているものの、ともかく暑いという。
6月〜9月になると、少々気温は下がるものの、今度は雨がたっぷり降る。湿度が高く蒸し暑い、一年で最も過ごしにくい季節、つまりモンスーンの季節だ。
このモンスーンの時季に結婚する人は、ほとんどいない。
そもそもインドの結婚式は屋外でやらねばならない行事がある。従って、夏季やモンスーンは避けるべきなのである。
ではなぜ我々は、よりによってモンスーンの時季に、結婚式を挙げてしまったのだろう。
結婚を決めたのは、2001年の初旬だった。最初は取りあえず、夏ごろに米国で結婚の申請をするつもりでいた。
ただ、わたしとしては、「ウエディングドレスが着てみたい」という、ちょっぴりミーハーな願望があったため、ハワイなどで、ごく身近な家族を招いての結婚式とパーティーをするのもいいかなと思っていた。
A男(夫)はハワイ案を気に入り、「じゃあ、ハワイで結婚式をしよう」ということになった。
どこか小さな教会で式を挙げたあと、のんびり休暇を楽しむのがよさそうだ。ともかくは情報収集、というわけで、インターネットであれこれとリサーチする。数日後、調べ上げたデータをA男に示したところ、
「えーっ? どうして僕たちがキリスト教の結婚式をするの? 僕はヒンドゥー教徒でミホは仏教徒でしょ? ウエディングドレスが着たいだなんて、何言ってるの?」
「何言ってるのって言いたいのはわたしの方でしょ? いったいどこの誰が、ハワイでヒンドゥー式やら仏式の結婚式を挙げるのよ?!」
「とにかく、僕は結婚式をするなら、ヒンドゥー式でするから。そんなにウエディングドレスが着たければ、一人で着れば?」
憎々しい限りだが、彼の言うことにも一理ある。確かにヒンドゥー教徒と仏教徒がキリスト教式の結婚式を挙げるのは妙なものである。
どうせヒンドゥー式でやるなら本場インドがいいだろう。わたしはまだインドに行ったことがないから、これはA男の母国を訪れるいい機会だ。そうだそうだ、インドで式をしよう、という運びになった。
インドの夏は暑いと聞いているが、冬だとまだ1年近くも先の話。先延ばしにしてお互い気が変わっても厄介だ。それに夏の方が、A男も長期休暇がとりやすい。わたしが暑さを我慢すればいいだけだから、やはり夏にしよう。ということになった。
インドの家族には、A男から、「あまり大げさではない、身内だけの結婚式にしたい」と連絡を入れた。なにしろ、文化の違う者同士の結婚だから、派手にやるのは無理がある。
無論、インドの結婚式というものが、いったいどういうものなのか、ほとんど知識がなかったから、そのときは何ともいえなかったのだが……。
ところでわたしの父は前年、肺がん(しかも末期)を発症し、抗がん剤治療を受けるなどしていたため、両親を招待するつもりはなく、わたし一人で行こうと思っていた。無論、妹夫婦が来てくれるなら、うれしいけれど……。というくらいに考えていた。
さて、日本の家族にインドで結婚式をする旨、報告せねばと電話をかけた。父は不在だったので、ひとまず母に、この夏結婚することを伝えた。
すでに我々は付き合い始めて5年もたっていたし、近々わたしたちが結婚するであろうことは両親も予想していただろうから、母も驚くということはなく、とても喜んでくれた。
ただ、インドで結婚式をするということに関しては意外だったようで、母は少々残念そうに
「ニューヨークでやるんだったらねえ……」とつぶやいた。
母はニューヨークが好きなのである。
「もちろん、インドはわたし一人で行くから。日本へは、改めてA男と挨拶に行くよ」
そう言って、電話を切った。
翌朝、ひどく早い時間に、父が電話をかけてきた。
「美穂、結婚おめでとう! 幸子(母)が昨日、何て言ったかしらんけどね。式にはぜひ参加させていただきますから! 僕は、美穂の結婚式のためなら、インドでも、地の果てでも、どこへでも、這ってでも行くからね!」
あいたた〜。
うれしいけど、でも、なんか大変なことになりそうな予感。それはそうと、インドと地の果てを並べては、インドに申し訳ないと思う。
それでもって、這って来られても、困る。
そういうわけで、日本から、両親と妹夫婦がインドへやってくることになったのだった。
基本的には、夫の家族のみが結婚式に関する責任を負担することになるため、イベントは最小限にしたいとA男もわたしも思っていたのだが、インドに電話を入れるたび、「あれもやろう」「これもやっておくべきだ」と、だんだん話が本格的になっていった。
結局、結婚関連のイベントは4日間に亘って行われた。
無論、イベントそのものはすべて夕方から夜にかけて行われるため、昼間は観光やショッピングなど結婚式とは関係のないことをして過ごした。
結婚関連のイベントが行われる最初の1週間は日本から家族が訪れ、後半の1週間は新婚旅行というプランである。
ここでは、インド滞在中の写真に加え、以前、メールマガジンのために書いた日記を併せて紹介した。
個人結婚式レポートにとどまらない、インドの人々の暮らしや文化の断片を、少しでも楽しんでいただければ幸いだ。
※結婚式関連の写真は、現地カメラマン及び妹夫妻の尽力によるものである。
2002年夏、MONSOON
WEDDING(モンスーン・ウエディング)というインドの映画が公開された。わたしたちが式を行ったのと同じ2001年夏に制作された映画で、インドの中流階級の結婚式の様子が見事に描かれている。我々の結婚式は彼らの結婚式ほど豪勢で気合いが入ったものではなかったが、随所に共通点が見られた。現在、ビデオやDVDも出回っているようなので、ご興味のある方は、ぜひご鑑賞ください。
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