「バンガロールで新しいビジネスを」という父の提案は、ガウラヴの音楽業界に対する思いを断たせるのに十分だった。

「父は、IIT(インド工科大学)を卒業した後、米国に渡り、ニューヨーク大学へ進み、1980年に茶の仕事を始めました。非常にコスモポリタンなビジネスマンで、尊敬すべき人です。音楽業界に進めないのなら、いったい何をすればいいのかと悩んでいた僕にとって、父のバンガロール進出のアイデアは、新しくてリスクも高い分、エキサイティングだと直感しました。父はまだ55歳ですから、一緒にビジネスをやっていこう、という感覚で接してくれるのが助かります」

そもそも独立心が強いガウラヴ。しかしまだ23歳になったばかりだった彼にとって、新しい業態への試みは、責任の重い仕事でもある。

「もちろん、責任は感じていますよ。でも僕は、ストレスOK!なんです。人の下で言われた通りの仕事をするよりは、責任を持たされる方が遥かにいい。父よりも、いい仕事をやりたいですからね!」

ガウラヴはまず、父のもとで1カ月ほど、茶や茶のビジネスについて学んだ。それからバンガロールに移り、ティールームの物件探しを開始する。2カ月ほどの間に500軒以上の物件を見て回ったが、なかなか思うような店舗が見つからない。

「ちょっと煮詰まっていたある日、この空き店舗を見つけたんです。店に入った瞬間、ここだ!と思いました。大家さんが近くに住んでいるというので早速訪れ、話をしました。家賃は、父と決めていた予算の2倍もしたのですが、もう、ここしかないと思い、父親との相談なしに、即決したんです」

彼が大家と契約を取り決めたわずか2日後、インド有数のコーヒーチェーン店 "Cafe Coffee Day"が、この店舗を借りたいとやってきたという。まさにぎりぎりのタイミングだった。

「ところで、この店、飲食店が何度も入ったらしいんですけれど、1年と持った店はなかったという悪いジンクスがあるんです。でも、僕はそのジンクスを塗り替えてやる! と思いました」

開店にかかわる殆どの段取りを、ガウラヴは一人で始めた。飲食店の経験が全くない彼にとって、全てが試行錯誤である。そんな最中、バンガロールで広告代理店を経営する、やはり若手のインド人男性が現れ、彼のビジネスに共鳴。店内のレイアウトにはじまり、インテリア、メニューの構成、ロゴマークの制作など、採算度外視で関わり始めた。

そして2003年の7月4日、晴れてinfiniteaがオープンする。ガウラヴ、23歳のときだ。

 

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