4月13日(3)バイブリーにて。600年前からここに在る、景色の中に紛れ込む 19世紀英国の、工芸デザイナーであり、作家であり、詩人であったウイリアム・モリスが「英国で一番美しい村」と言及したばかりに、コッツウォルズの中で最も観光客が多い村のひとつとなったBIBURY(バイブリー)。とはいえ、あくまでも小さな村は、行き交う人々ものんびりゆったりで、静かな佇まいを見せている。 ガイドブックを読みながら、「バイブリーへ行ってみようよ」という夫のアイデアで、寄り道をしながらたどりついた。村はずれの教会の前に車を停める。すると、思いついたようにブラックベリーを取りだして、今日、数度目のメールチェックを始める夫。 今、カリフォルニアは早朝だし、インドは深夜なのだから、何の進展もないことはわかっているはずなのに……。と思うけれど、あれこれ言うのもなんなので、 「先に教会に行ってるから、終わったら来てね」 と言って一足先に車を降りた。その狭い教会の庭をふらりと歩き、しかし、しばらくたっても夫が来ないので車に戻ったら、夫の姿はない。どこへ行ったのだ? 多分、メールチェックに気を取られていて、わたしの言葉を聞いておらず、どこか違うところへ行ってしまったに違いない。 ともあれ、ここ小さな村だから、すぐに見つかるだろうと中心地の方に向かって歩く。背の低い、石造りの家並みに沿って続く道。 大通りへ出て左手を望むと、ARLINGTON
ROW(アーリントンの小径)が目に入る。格段に古びたこの小さな家並みが、バイブリーを象徴する景観だ。14世紀に建てられたこれらの家々は、かつて羊毛店だったという。やがて織工小屋として利用され、現在は環境保全団体であるナショナル・トラストの管理下にある。 村の中ほどにはコルン川が横たわり、雲間から太陽がのぞくときには、水面がきらきらと光を弾き、浮かぶ鴨らも愛らしい。川沿いの道を真っ直ぐに歩くと、突き当たりにTROUT
FARM(マスの養殖場)があり、右手には名物マス料理が味わえるSWAN
HOTEL(スワン・ホテル)が見える。 この町でランチを食べる予定だったわたしたち。時計はすでに3時を回っていて、すっかりお腹が空いているのだが、夫の姿が見あたらない。いったいどこへ行ったのかと、30分ほど彷徨し、一旦、車に戻るがやはりいない。空腹で苛立ちが増し、ぷんぷんしながらもう一度、町中にもどる。 もう、一人で何か食べようかとも思ったが、しかしそういうわけにも行かず、更に15分ほど探すが、やはりいない。まったくどこへいったのだ……。と思い車に戻ったら、今度は車内で待っていた。一通りの口論を終えたのち、気を取り直して村の中心地を散策。 夫は、村とは反対方向にあるホテルの敷地内をうろうろしていたようだ。そのホテルですてきなラウンジを見つけたからそこでランチを食べようという。村の散歩を終えたあと、引き返してそのホテルに向かった。
BIBURY, COTSWOLDS/
APRIL 13, 2005