ランチを終えたわたしたちは、数マイル先のハーストキャッスルを目指す。インフォメーションで手続きをしたあと、専用のツアーバスで小高い丘の上まで行き、そこに立つキャッスル<大邸宅>の見学をすることとなる。 この邸宅の持ち主であったウィリアム・ランドルフ・ハーストは、1863年、サンフランシスコの裕福な家庭の一人息子として生まれた。新聞王と呼ばれた彼は、出版業界で富を築き、名をはせた。太平洋を望む地に建設されたこの大邸宅は、現在、州が管理するステイトパークとなっており、多くの観光客を集める観光ポイントとなっている。 ハーストは、キャッスルを建築するにあたり、敢えて歴史の重みを漂わせるために、古い素材を取り寄せるなど、さまざまに趣向を凝らし、財産を投じた。アンティークの家具や調度品も欧州各地から取り寄せられたという。また、無類の動物好きだった彼は、世界からさまざまな動物を集め、敷地内を「動物園」にして、ゲストを楽しませていた。 ハーストには妻があったが、この邸宅には愛人と共に暮らしていた。あらゆる業界の著名人らがここに招かれ、彼と彼の愛人にもてなされたという。ダイニングルーム、サロン、プール、シアター、ライブラリーと、いずれも贅を尽くした内装だが、しかしどこをみても、寂しげな空気が漂っている。今は無人であるが故か、それにしても、温もりの感じられない邸宅である。
HEARST CATSLE, SAN
SIMEON (CALIFORNIA)
太平洋を見下ろす丘の上。かつての新聞王、ハーストの邸宅へ