JUNE 25, 2005/ DAY 13
LAS VEGAS (NEVADA)
ラスヴェガス。にぎやかな、きらびやかな、はなやかな、ただなかで過ごす一日

ラスヴェガスの名物の一つに、ホテルでのブッフェが挙げられる。安い値段でバラエティ豊かな朝食やランチのブッフェを用意したホテルがたくさんあるのだ。前回、ものは試しにと、ミラージュのランチブッフェに出かけた。大人も子供も、山ほどの食事に加え、目を見張るほどのクッキーやケーキ、チョコレートに生クリーム、アイスクリームを皿に盛って食べている。

ゲストの多くは、著しく肥満していた。「好きなものを少しずつ味わう」というよりは、「好きなものを好きなだけ無制限に」というその雰囲気は、食欲旺盛なわたしでさえも、辟易してしまった。それに加え、渡米前の体重に戻すため、食生活に気を配りはじめた身にとって、ブッフェは不適である。そんなわけで、たとえそれが名物であっても、今回はブッフェへ行くつもりはなかった。

だから夕べ部屋で見つけたブション (BOUSHON)の案内を見つけたときはうれしかった。「ラスヴェガスで一番と評判の朝食」との謳い文句があるのを見て、なおさらうれしくなり、明日はここで朝食を、と思った。

フレンチビストロ、ブションは、米国で最も有名なシェフの一人であるトーマス・ケラーによるレストランだ。カリフォルニア・ワインの産地であるナパにある彼の店、フレンチランドリー (FRENCH LOUNDRY)、ブションに続いて、このラスヴェガス店がオープンしたらしい。また、マンハッタンのコロンバスサークルに、最近、パー・セ(PER SE)という店もオープンした。

わたしがブションに関心を持ったのは、書店で料理の本を眺めていたときだった。麦の穂の形をしたエピという名のバケットとバター、そして赤ワインが表紙を飾るその本は、美しい写真とレイアウトで構成されていて、非常に印象的だったのだ。いつかこのバケットを食べてみたい、と思った。

朝食は10時までとのことなので、朝寝したいのを我慢して起床し、ヨガもそこそこに着替えて出かける。のろのろと支度をしている夫を置き去り、一人でビストロに向かう。ところが! プライヴェート・パーティーのため貸し切りで、一般客は入れないとのこと。今日のハイライトがいきなり没になりがっかりである。

うなだれているところに夫がやってきた。彼はなぜ、わたしがこの店の朝食にそこまで執着しているのか理解できない様子である。無口な妻を率いて、スパのダイニングでヘルシーな朝食。

朝食のあとは、ショッピングモールを歩き、ウインドーショッピングして過ごす。またしても、夫がバーバリーのセールを発見し、「ミホ! 一緒に行こう!」と誘う。バーバリーのセールは、もういい。

SEPHORAで日焼け止めや口紅などを調達した以外は特に買い物もせず、館内にはグッケンハイム-エルミタージュ・ミュージアムもあるが絵画を鑑賞する気分でもなく、イタリアンレストランでランチをすませたあとは、部屋に戻ってくつろぐことにした。

最後となった持参のワインを開け、窓際のデスクで写真の整理や旅のレポートを綴る。夫はプールへ泳ぎに行ったあと、戻ってきた。

「せっかくラスヴェガスに来たのだから、何かエンターテインメントを楽しもうよ」

そう言って、持ち帰ってきた数冊の情報誌を開く。シルク・ド・ソレイユの新しいショー、"KA"や、子供は見られないセクシーな"ZUMANITY"など、興味がないわけではないのだが、「ぜひとも観たい!」という衝動がわかない。

二人してベッドにゴロゴロと寝転びながら、ページを繰りながら、「どうする〜?」「どうしようか〜?」「観たいけど、なんだか面倒だね〜」とやる気がないのである。多分わたしたちは、長旅で疲れているのである。

結局、何の予約もいれぬまま、夕刻まで部屋でのんびりと過ごし、夕食くらいは雰囲気のいいところで、ということで、朝食を食べ損ねたブションへ行くことにした。

白ワインで乾杯した後、ナプキンを包む紙に記されたメニューに目を走らせる。テーブルの上に無造作に置かれるパンとバターの、その様子がとてもいい。パンの味わいも、とてもいい。二人が好きなフレンチオニオンスープ、それからサラダ、ローストチキンの料理を注文する。ビストロ故、さほど気取った店ではないから、料理はシェアすることにする。

フレンチオニオンスープはボリュームたっぷり。おいしいパンを噛みしめながら、スープを味わううちに、すでにお腹いっぱいになりそうだ。

隣のテーブルでは、妙齢の夫婦が、この店の「名物」であるペースト状のフォアグラを、香ばしいパンのスティックに付けて食べている。赤ワインを飲みながら、「うまい!」を連発する夫。本当においしそうだ。フォアグラやパテは大好きなのだけれど、あとあと胃がもたれるのが難である。

控えめに味わえばいいのだけれど、そのときは口当たりがいいから、ついつい出されただけ食べてしまい、のちに後悔する、やっかいな食べ物である。かつて夫が見舞われたエクサン・プロヴァンスの悲劇は、フォアグラが引き金であった。(美しくないエピソードなので、飲食中の方にはおすすめしないが、知りたい方は、こちらへ。)

チキンは大きな骨付きのもも肉が2つ。さっぱりとした味付けながら、肉に味が染み込んでいておいしい。シェアしても食べきれないくらいだ。

と言いながら、食後にはおすすめのデザート、プロフィトロール(PROFITEROLES)を。これは、いわば「シューアイス」のようなもの。おいしいにはおいしいが、これは我が自作のシュー皮にハーゲンダッツのヴァニラアイスを挟んで食べる方がおいしいかも、という味だった。しかしながら、その、まるまるとしたプレゼンテーションがかわいらしい。チョコレートソースをかけて食べるのもまた楽し。

2時間ほどもかけて、ゆっくりと料理を味わい、とてもリラックスした夜。食事のあと、ホテルを出て界隈を散策してみたが、あまりの人混みに、ほどなくして引き返す。ホテル内には「流行の」クラブなどもあったが、喧騒の中でお酒を飲む気分でもなかったので、バーで生演奏を聴きながら(十分に喧騒か?)、しばらく過ごす。

エンターテインメント性に欠けてはいたが、いい一日だった。

CIRQUE DU SOLEIL

THE VENETIAN


スパやジムがあるキャニオン・ランチ

キャニオン・ランチ内のカフェでヘルシーな朝食。

灼熱の太陽の下で日光浴をする人々。

わたしは専ら、建物内を巡る。

トラットリアでランチ。

ヴェネツィアもどきを背景に。

ホテルの外観。サンマルコ広場を再現している。

 

ホテルの部屋からの景色。彼方は荒野だ。

新しいホテル、WYNNが見える。

この、素っ気なさげなプレゼンテーションが、いいのだ。

プロフィトロールの様子もかわいらしい。

お向かいミラージュでは、定期的に火山が爆発。こちら側まで熱風が届く。そもそも暑い砂漠地帯。より一層、暑くしてどうする。ベラージオの噴水は美しくて涼しげでいいけれど。いずれにしても、フーヴァーダムからのエネルギー、使いまくりね。

演奏に合わせてちょっと踊ったりなどして、一日が終わった。

BACK NEXT