JUNE 21, 2005/ DAY 9
SECOND MESA (ARIZONA)- TUBA CITY (ARIZONA)- CAMERON (ARIZONA)
夕暮れどき。刻一刻と、色を変えゆく大空に抱かれて、滑るように道を走り抜ける

毎晩、目的地に夜遅く到着して、遅い夕食だから、身体によくない。今日こそは早めにチェックインして、9時までには食事をすませようと決めていたのに、やはり予定通りには行かないのが旅である。ましてや日が長いうちは、「夜だ」という感覚が薄れて、ついつい先へ先へと走ってしまう。

それに加え、今日は夕景が見事だ。刻一刻と、色を変える空。カーブを曲がるたび、丘を越えるたび、目に飛び込んでくる、新しい、鮮やかな光景。「わあ!」「きれい!」「すごいね!」と、感嘆の言葉を上げながら、車窓から眺めるだけでは飽き足らず、ときに車を停め、車を降りて、風景を眺める。

過ぎ行く車はほとんどなく、絶景をただ二人だけで眺めている。なんという贅沢だろうか。

やがて太陽が地平線の彼方に沈み切ったころ、ようやくチュバ・シティに到着した。すでに時計は9時をさしている。町で唯一のモーテルの扉をあければ、こともあろうか満室! こんな僻地で満室だなんて! ががが〜ん。カンファレンスか何かがあるのだろうか。夫は「本当に一室もないのか?」とフロントに食い下がるが、一室もないらしい。

仕方ない。諦めて、次の町を目指すことにする。お腹が空いたけれど、まずは宿を見つけてからだ。次の町はグランドキャニオンのサウスリムの拠点、CAMERON(キャメロン)である。ここから更に30マイル、30分ほど走らねばならない。昼間だと30マイルくらいどうということはないが、夜はなんだか長く感じられる。

すでに日はとっぷりと暮れ、あたりは真っ暗闇だ。ヘッドライトの灯だけを頼りに走る。お腹は空くし、疲れたし、きれいな夕日を見たけれど、余韻に浸る気分でもない。ようやくキャメロンに着いたころには9時40分。ここにもやはり1軒しか宿がない。

サウスリムの観光拠点と言うことで、巨大な土産物店とレストラン、そしてモーテルが「3店セット」になって、どしんとある限りである。

ここも満室と言うことはなかろうね、と思いつつ、カウンターの前に並ぶ。無事に部屋があることを確認したものの、レストランは夜10時までの営業と言う。時計はもう9時55分を指している。急がねば! と、部屋に荷物を運び込む前にダイニングルームに向かうが、どうも全体の雰囲気に閉店間際の気ぜわしさがない。みな、ゆっくりと食事をしている。

おかしいな……と思って店の時計を見たら、まだ9時前だ。あれ? アリゾナ州は、ユタ州と同じMOUNTAIN TIMEのはずなのに、なぜ、1時間遅れているの? 同じ州内で時間帯が違うの? なんだかよくわからないが、ともかく1時間得をしたのだからいいや。それにしても、この1時間がことのほか、ありがたく感じる。

今日も走りに走って、すっかりくたびれたけれど、同時に今日ほど、大地の力強さを肌身に感じた日もなかった。

本当に、広い。この国は。

[DAY 9/ Miles Driven: 410(2780)]


キャメロンで宿を見つけた。へとへとながらも夕食はきっちりと。

インディアンの工芸品が飾られた味わい深いインテリアのダイニングルーム。

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