小さな小さなミニカーで、走っているような気がする。あのプラスチックの、人生ゲームの駒になってしまった気がする。 ちょうどロッジに到着した時、太陽が地平に沈むところだった。月が地平から上るところだった。 「陰陽の中心に、ぼくたちは立っているね」 と夫が言う。本当にそうだ。両手を水平に伸ばしてみる。右手に太陽、左手に月。その中心にわたし。 ゴビ砂漠を北へ進む列車の窓から、右に月を、左に太陽を見た、あの寂寞の夕暮れが脳裏に蘇る。あの日と似た鮮烈さで、心に迫る日没の情景。たとえ、観光客があたりにいても、人々の話声が聞こえても、車のエンジンの音がしていても、なにもかもが微々たる存在に思え、煩わしさの微塵もなく。森羅万象、大地に抱かれ、飲み込まれている。 ただもう、深い深いため息が、出るばかりだ。 [DAY 8/
Miles Driven: 415(2370)]
JUNE 20, 2005/ DAY
8
MONUMENT VALLEY:
NAVAJO TRIBAL PARK & THE NAVAJO RESERVATION
(UTAH)
遠い遠い昔から、地球の素肌に触れ合い生きる人々の国、ナヴァホ・ランドへ
巨大な砂岩のふもとにあるグールディングス・ロッジ
(GOULDING'S
LODGE)。あまりのロケーションのすばらしさに、「驚き笑い」がこぼれる我々。 夫がチェックインをしている間、妻はロッジ内を散策して写真撮影。こんなすばらしい場所に宿があるなんて。予約が取れてよかった。
長距離ドライヴのあとは、ビールが一番! と思ったが、ナヴァホ国ではアルコールが飲めない。従って、ノンアルコールのビールで乾杯。でも、おいしくて、酔っぱらった気分になるから不思議。単に疲れているのか……? おすすめ料理「ナヴァホ・タコ」を注文。ナヴァホ名物の揚げパンに煮豆やサラダが載っている。おいしい。
こちらもおすすめのビーフシチュー。家庭的な味がする。おいしい。 深夜、風呂上がり。月を見ようと外に出た。岩間から上る満月が、白くまばゆい光を放っていた。