JUNE 20, 2005/ DAY 8
SHIPROCK (NEW MEXICO)- MONUMENT VALLEY (UTAH)
赤い大地と砂岩のモニュメント・ヴァレーへ。夕暮れのその、幽玄美

今回のドライヴ旅行に先がけて楽しみにしていたのは、このモニュメント・ヴァレーだ。ナヴァホ・インディアンの居住区内にあるここは、米国が管理する国立公園ではなく、ナヴァホの管理下にある。従って、他の国立公園のように商業化されておらず、公園内の宿も古くからのロッジが1軒あるだけだ。

旅行前には詳細なスケジュールを立てられなかったので、宿の予約をしていなかったのだが、サンタフェに滞在中、夫が問い合わせたところ、幸い空室があったので予約を入れておいた。日が暮れてしまう前にたどり着こうと、西へ向かってひたすらにアクセルを踏み続ける。

ユタ州の南端にあるレイク・パウエルを中心とした半径約150マイルのエリアは、通称"グランドサークル (GRAND CIRCLE)"と呼ばれている。ユタ州、アリゾナ州、コロラド州、ニューメキシコ州を含むグランド・サークルには、いくつもの国立公園、国定公園があり、雄大な自然美に出会うことができる。

有名なところでは、グランドキャニオン国立公園、ザイオン国立公園、ブライスキャニオン国立公園、キャピトルリーフ国立公園、アーチーズ国立公園……などが挙げられる。

わたしは以前、インド家族とザイオン国立公園、ブライスキャニオン国立公園、キャピトルリーフ国立公園などに行ったことがある。特に気に入ったのは、ザイオンのトレッキングルートと、ブライスキャニオンの景観だった。(※そのときの紀行はこちら

今回は、まずモニュメント・ヴァレーを巡り、それからイタリア人マックスに勧められたキャニオン・デ・チェリを経由して、グランドキャニオンに入る予定である。

さて、シップロックからルート160を西に走っていたわたしたちは、夕暮れ間際になったところでロッジに電話をし、夕景が美しいルートを尋ねる。スタッフの勧めに従い、少し遠回りになるが、メキシカン・ウオーターというポイントでルート191に移り北上、ルート163にぶつかったところで南西方面に進路を変える。

やがて右手、つまり北側に、目を見張るような風景が現れはじめた。車を停め、外に出る。車の中から見る風景と、一歩外に出てみる風景とでは、その臨場感は雲泥の差だ。だから、少々面倒でも、ここだという場所では車を停めて、車から出る。

外に出て、風に吹かれながら、目前の光景を眺める。しかし、その風景の実体がよく分からない。目をこらしてみる。一番上の写真がそれだ。写真では到底捉えられないその幽玄美。峡谷の壁面がまるで鏡のようで、その手前にある砂岩を反射しているようにもみえる。立体感、遠近感がうまくつかめず、どこに焦点をあわせればいいのかわからない、なんとも奇妙な光景だ。

地図には何も記されていなかったが、あとで調べたところ、そこは"VALLEY OF THE GODS"という名の場所だった。神々の峡谷。もっと近付いてみたいけれど、近付いてはいけないような神々(こうごう)しさをたたえた有り様だった。

やがて"MEXICAN HAT"呼ばれる、まさにメキシコの帽子のような形の砂岩が現れ、ほどなくして遥か前方に、夕映えに染まるモニュメント・ヴァレーの姿が見え始めた。

走る車はほとんどない。ごく稀に、大きなカメラを携えたフォトグラファーや、旅行者を見かけるくらいで、本当に、人の気配がない。だから一層、夢見心地な、現実から遠い場所にいるような、奇妙な感覚に襲われる。地球の素肌に触れているみたいだ。


ルート160を西に進む。

ルート191との交差点で、北上。途中でユタ州に入る。

名もなき砂岩があちこちに現れはじめる。

今度はルート163を西に。あと数十マイルだ。

太陽のあたる加減によって、大地の色は著しく変化する。

前を見ても、後ろを振り返っても、空漠と乾いた場所。

雲があるおかげで、風景が少し温かく見える。

メキシカン・ハットの名を持つ砂岩。ぽつんとある。

モニュメント・ヴァレーに入る前に給油。窓のお掃除。

なんとか日没前に到着しそうだ。

いよいよ、前方に、モニュメント・バレーが見えてきた。

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