JUNE 17, 2005/ DAY
5
SANTA FE (NEW
MEXICO)
小高い丘の上にたつ、サンタフェ・スタイルの由緒あるリゾートへ
乾ききった大地に、ただ真直ぐにのびる道を、するするとなぞるように走り続ける。やがて、荒野のただ中に、アドビ(ADOBE:
日干しレンガ)様式の住居がぽつんぽつんと見え始めた。そろそろサンタフェが近付いてきたようだ。
実は15年前、わたしは出張でこのあたりへ来る予定でいた。アルバカーキを拠点にサンタフェ、グランドキャニオン、セドナ、ルート66、ロサンゼルス……というルートで、取材の予定を立てていた。ところが出発の直前になって仕事で大きなミスをしてしまい(編集者人生最悪の大誤植事件)、その処理に追われたため、取材は他の男性社員に行ってもらうこととなった。
外注のライターとカメラマンは当時どちらも30歳前後の男性、男性社員は20代半ば。3人ともロードトリップをとても楽しんできた様子で、帰国後、
「坂田さんには悪いけど、男三人で出かけたのがよかった」
と、外注の二人に言われた時には、取材がうまくいってよかったと思う反面、なんだか無念だった。こういう旅の感覚を楽しむのは、「性別」よりも「性格」の問題だと思うのだけれど。とはいえ男同士で気兼ねなく「ワイルドな旅」というのが、気分的によかったのだろう。時を経て、こうしてこの地のドライヴ旅行を実現できたのは、幸運なことと思う。
ところで、このドライヴ旅行の出発前は、引っ越しの準備に終われていて、ゆっくりと旅のプランを練る余裕はなかった。ただ、連泊するサンタフェとラスベガスのホテルだけは、直前になって夫とガイドブックやインターネットで慌ただしく下調べをし、予約しておいたのだった。
サンタフェには、TEN
THOUSAND
WAVES(萬波)という有名な日本風の温泉宿があり、そこにも関心があったのだが、いくら温泉にひかれるからといって、サンタフェで温泉宿に泊まるのは何かが違う……と思い、機会があれば温泉だけに入りにいくとして、宿はサンタフェらしいところにしようと思った。
町中にもいくつかのよさそうなホテルがあったが、長距離ドライヴの疲労をいやすべく、スパが充実したリゾートがいいと思い、サンタフェスタイルのリゾートだという"BISHOP'S
LODGE"を選んだのだった。
ちなみにサンタフェとは、アメリカ先住民(ネイティヴ・アメリカン/インディアン)の文化、スペイン植民地時代の文化、侵攻してきたメキシコの文化などが融合し、独特の雰囲気を醸し出している土地だ。古くからアメリカ国内で最も人気のある旅先の一つとして知られている。町にはアートギャラリーやアンティークショップも多く、美術品、工芸品を目当てに訪れる都市部からの旅行者も少なくない。
さて、いよいよサンタフェの郊外に入った途端、わたしたちは少々落胆した。米国で最も人気のある旅先であるから当然のことといえば当然のことなのだが、想像していた以上に「商業化」されていたのだ。見覚えのあるブランド名が名を列ねる、しかしアドビ建築風のショッピングモールがあちこちにある。
条例により、サンタフェ内の建築物は景観の調和を乱さぬよう、プエブロ・インディアン(インディアンの集落、村落)様式にすることが定められているようだが、それはむしろ、町を「アミューズメントパーク」のように見せることにもなる。ともあれ、サンタフェ・プラザと呼ばれるいうダウンタウンは、まだ情趣があるだろうと期待して、車を走らせる。
この週末はたまたま「ゲイパレード」が行われているとかで、町中は大渋滞だったが、なんとか通過して、われわれの宿、"BISHOP'S
LODGE"を目指す。町外れへ、わずか2マイル車を走らせただけで、そこは別世界だった。小高い丘の上に立つロッジに車をとめ、ドアをあけて外に出た瞬間、清澄な空気に包まれて、「来てよかった!」と思った。
リゾート内には何棟かのロッジが点在しているほか、プールやスパもある。広大な敷地内にはトレイルもあり、乗馬やトレッキングも楽しめるとのこと。ひとまずは、チェックインをし、部屋に向かう。
サンタフェスタイルだというその屋内は、たっぷりと余裕のある空間。ことに天窓のあるバスルームが爽やかで気に入った。トイレ、バスタブ、シャワールームが個別になっている上、洗面台も2つあるのがいい。
これから3泊。引っ越し&長距離ドライヴの疲れを、ここでゆっくりと流し去ることができそうだ。
The
Hills and Villas at Bishop's Lodge
|