あたりの光景が、だんだん乾いてきた。最早、牧草地も見られず、ひたすらの地平線が見渡せるばかりだ。運転にもいい加減、飽きてくる。早く第一の目的地であるサンタフェにたどりつきたい。無論、サンタフェ入りは明日の予定だから、今日はまた、どこかの町のホテルかモーテルに泊まることになるだろう。 それにしても、この国の、なんとガラ〜ンとしていることだろう。びっしり人口密度のインドとは雲泥の差だ。 この大陸をインドと間違えるだなんて、コロンバスもどうかしてるよね、などと気だるく言葉を交わしつつ、主にはそれぞれ無口に、ただ目の前に広がる光景を眺めている。 「わたしたちは、こんな場所には、住めないね」 最早ここは、別の国だ。ニューヨークやワシントンDCやサンフランシスコやボストンやシカゴや、そういう都市部とは、まったく違う国だ。この国の「国民性」は、決してひと括りに語れないと、改めて思う。 この国のパスポート保持者の比率は、他の先進国に比べて少ないということが、よくわかる。ここに生まれ育つ人たちの多くは、米国内の大都市に行くことさえ、一大イベントになるのではなかろうか。 無辺の大地に暮らす、中国の内陸部やモンゴルの荒野やモロッコの砂漠などで生きる人と、メンタリティが似通ってもおかしくないとさえ思える。いや、しかし決定的に違うのは、どんな辺境の地に住んでいたとしても、そこが米国である限り、そこに住む人は「世界で一番の超大国に住んでいる」とう自負が、多分あるということ。 ところで、このあたりに来て、車のフロントガラスの汚れが顕著になってきた。小さな昆虫(ハエその他)が、ビシバシぶつかってくるのだ。洗浄液を流しながらワイパーで拭くのだが、汚れはとれない。 いつまでも、いつまでも、太陽がじりじりと照りつけている。ひたすらに、ただひたすらに、走る。
今日はAMARILLOの先まで走る予定。まだまだ道は続く。 無辺の大地に、突然現れる牛の群れ。
JUNE 16, 2005/ DAY
4
OKLAHOMA CITY
(OKLAHOMA) - AMARILLO
(TEXAS)
やがてテキサス州。照りつける日差しのもと、茫洋とした光景の中をひた走る
「住めないね……」
風力発電のための風車が並んでいる。 日差しが暑すぎるせいか、木陰で寄り添う牛の群れ。
休憩所には木陰があり、そこだけは風が涼しい。一歩、日なたに出ると太陽がじりじりと照りつけて、乾いた暑さに襲われる。が、ここにきて、日差しに強い夫。「インドみたいで懐かしい」らしい。 ついには身体を伸ばすのも面倒になってきた。妻はけだるい。
前方に大型バイクを疾駆させるライダーが二人。 うわ! 年輩のおばさまだった。エンジンぶるぶる、二の腕ぶるぶる、させながら走ってます!!
こちらはハズバンド? あれ? 見覚えのある十字架だ。同じ宗教施設のようだ。
窓に虫がビシバシぶつかってきて、とても汚い。 時々、鉄道と寄り添うように走る。
ここもまた、ローカルのガソリンスタンド・チェーン 野菜不足にはV8。米国で最も認知度の高い野菜ジュース。
中央分離帯が広いのは、事故のリスクを減らすためだろう。一人で運転していたら、寝てしまいそうな光景。 たまに風景に起伏が現れると、珍しいものに出会ったような気になる。