そしていよいよ、旅も終盤。最後のホテルに移る日を迎えた。 車で約10分ほど。同じ街にありながら、本当にここは別世界だ。 ↑庭に面したバルコニーのある部屋にチェックイン。スパークリングワインで迎えられる。ウエルカムワインはインド産（このワインは残念ながら、あまりおいしくはなかった） →ホテルの入り口で「伝統的なインドの歓待」を受ける。額にビンディーを付け、ジャスミンが香る花輪をかけてくれた。
11月12日（金） ■荷物をまとめてチェックアウト １泊の短い滞在を経て、朝、次のホテルへ移るべく荷造りをする。ビルが建ち並ぶ窓辺から、外の風景を眺める。隣のビルの屋上で、多分労働者であろう青年らが、こちらから見られているとは気づかずに、ほとんど全裸で水浴びをしている。あまりの刺激的な光景に、思わず見入る。いや、目をそらす。 目をそらすと今度は、向こう側のビルの屋上で、油を売っているウエイターらしき青年二人。いったい屋上で、なにをしているんだ君たちよ。 ■そして最後のホテルへ。そこは緑の楽園だった 最後の４泊は、タージ・ウエストエンド。バンガロール市街とはいえ、喧騒の繁華街からは少し離れた場所にある。向かいには競馬場があり、付近にはゴルフ場がある。ゲートを抜けると、緑に覆われるようにして、白いコロニアル建築の建物が見えてきた。気品のあるたたずまいだ。 ゲートでは、サリー姿の女性らが、ジャスミンの香りがすばらしい花輪をかけてくれ、額に赤いビンディを施してくれる。そして、ゆったりとソファに腰掛けてのチェックイン。 部屋はいくつかの棟に分かれている。わたしたちの部屋は広い庭に面した場所にあった。バルコニーからは、一面緑の光景が見渡せる（写真上）。どこかリゾートに来たような気分になり、とてもうれしい。部屋に届いたスパークリングワインを飲みながら荷をほどき、しばらく外を眺める。 ほどなくして、ダイニングルームへ行き、テラスで遅めのブッフェのランチをとる。このテラスからもまた、別の庭が見渡せる。鮮やかな色をした羽根を持つ鳥たちが、空を横切り、木枝に止まる。 食事を終え、毎度おなじみ南インドのコーヒーを飲みながら新聞を読む。インドの新聞は、なかなかに面白い。バンガロール版にはIT業界の特集ページがあって、キャリア構築のためのストラテジーや就職情報などが事細かに掲載されている。この街の昨今の趨勢を目の当たりにできる記事だ。 一方で、クラシファイド（求人）欄には、相変わらずマッチメーキング（お見合い）情報がびっしり。花婿募集、花嫁募集の欄を読んでいくのは実に面白い。「当方23歳、美人、色白、スリム」など、ほとんどが外見重視。 使用言語別、あるいはカースト（廃止されたとはいえ）、インターナショナル（海外在住）などによって項目が分けられている新聞もある。この伴侶募集の広告については、また別の機会にゆっくりと書きたいものだ。 やがて、夫が現れた。彼は正午に到着する便で、プネからバンガロールに到着したのだ。 他の仕事関係者らは、すでに西海岸に帰国し、ヴィンは故郷のニューデリーに戻ったという。タージマハルに行った折、ヴィンは何度も、 「29年ぶりに、家族でディワリを迎えるんだよ！ すごく楽しみなんだ」 と、うれしそうに言っていた。今夜、彼の実家では、きっと大賑わいの宴が繰り広げられるのだろう。 夫もまた、遅いランチをとる。関係者らとの仕事はこれで終わり、明日からはバンガロールで開催されるいくつかのカンファレンスに参加する。 ひとまず今日は仕事がないので、午後はゆっくりとホテルで過ごすことにした。小雨の降る庭を散歩した後、夫はベッドに寝転がってクリケット観戦。わたしは本を読んだり文章を綴ったりして過ごす。夜のパーティーまで。
BANGALORE, NOVEMBER
12, 2004
行き先は、タージ・ウエストエンド。
チェックアウトのとき、フロントのお姉さんに尋ねた。
「ウエストエンドは、どんなホテル？」
「こことは全然違うわよ。騒がしい場所にある、
こんなマッチ箱みたいなホテルじゃないの。
緑がいっぱいの、とても静かなホテルよ」
雨に濡れた緑らが、限りなく瑞々しい。
なんてすてきな緑の楽園。
幹の表面に植物が絡みつき、まるで角を生やした生き物のような木。 この細い木は白檀（サンダルウッド）。くんくんと匂いを嗅いでみたけれど、何の香りもなかった。やはり表面を削らなければ香りは立たないようだ。
