SCENE 51: 愛憎のクロワッサン
BANGALORE, NOVEMBER 11, 2004

このホテルの朝食は、とてもよかった。

新鮮なフルーツに、ヨーグルト、チーズ。そしてペイストリーが抜群。
ヨーロッパから来たペイストリーシェフが
毎朝焼き上げる、ホカホカのパンが、
籠に盛られて並べられる。

特にクロワッサンがおいしくて、普段は一つしか食べないのだけれど、
ここでは毎朝、2つ食べた。

最終日。いつものようにふんわりパリッとしたクロワッサンを、一口。
瞬間「ジャリッ」といやな音。
小麦粉に、小石でも紛れていたのだろうか? インドだもの。

気にせずに、食べ続けていたら、前歯に微かな違和感が……。
下の歯の表面が、ほんの少し、欠けたみたい……。

世界広しといえども、クロワッサンを食べて、
歯が欠けた人間は、そうたくさん、おるまい。

おいしい! と思えば、これだもの。
気が抜けないこと、このうえない。
やれやれ歯医者に行かねばなあ。


BACK NEXT