11月4日(木)
■夫はカンファレンスへ。妻はお茶を買いに行く
ニューデリー滞在中、夫は2日間に亘り、タージ・パレス・ホテルで開催されるカンファレンスに参加する。"The
India Conference: Welcoming the World"
と題されたカンファレンスで、主催はユーロ・マネーという英国系の銀行、ステイトバンク・グループ、HSBC、協賛はGEコマーシャル・ファイナンスやカナダ・バンクなど、金融関係である。
極めて簡潔に表現すると、「昨今、目覚ましい発展を遂げつつあるインド経済に、ぜひとも投資しませんか」というのが会の主旨である。国内外から大勢の参加者(夫曰く700人程度)を募り、政治家を含めた、インド経済の鍵を握っている人物らによるスピーチなどが行われるらしい。
わたしも出席したいくらいだが、そういうわけにもいかないので、快適なホテルライフを満喫することとする。
と、その前に、今日中にニューデリーでの必要なショッピングをすませておきたい。それはお茶の購入。これまで何度か書いてきた、インド来訪のたびに訪れているスンダーナガールマーケットにあるREGALIAというティーハウスへ行くのである。この店は、海外輸出用の品質が高いお茶を販売しているのだ。
毎回、あれこれと飲み比べつつ品定めをしていたが、今回は欲しいお茶が決まっている。ダージリンのセカンドフラッシュと、セカンドフラッシュの中でも更に質の高いオーガニックのマスカテル。今回は第三者へのお土産はなく、自宅用と、日本の家族向けのみだ。
店に入って驚いた。欧米系の旅行者が、狭い店内に4、5組、ひしめき合いながらお茶を選んでいたのだ。今まではいつもがらんとしていたのに。わたしたちが1時間ほどもお茶の「テイスティング」で居座った時も、お客はほとんど来なかったのに。
と、奥から店のお姉さんが出てきた。彼女はわたしのことを覚えていて(覚えられて当然か)、あらまあ、おひさしぶり、お元気? とにこやかだ。
「すごい盛況ね! 広告でも出したの?」とわたしが問うと、
「ううん。口コミなのよ。最近になって急に増えてきて、ビジネスは順調よ」とにこやかだ。
インドの「本当においしい紅茶」は、高級ホテルでさえも口にすることができない場合が多い。街角に気取ったティーハウスがあるわけでもなく、だから、ミルクをたっぷり入れて飲むマサラティーやチャイが一般的だ。
高品質のお茶の多くは、英国をはじめとする欧州の高級ブランドに、茶園から直接買い取られる。それらの茶葉は美しいパッケージに詰められ、世界の市場に出回るのだ。
この店の商品もだから、パッケージには「輸出用品質」とわざわざ但書きがされている。なにはともあれ、ローカルの店が繁昌するのはいいことだ。
「また来るわね!」と言って店を出た。
■やはり、謎は多い。インドの人々の在り方。
ランチはホテルのダイニングで。軽めにすませようとアラカルトメニューを開く。と、朝食時に顔を合わせたマネージャーがやってくる。
「マダム。ブッフェはいかがですか? すばらしい料理がそろっていますよ」
「ありがとう。でも、ランチは軽くすませたいので、サンドイッチにしておきます」
「マダム。飲み物はいかがですか?」
「食後にコーヒーをいただくので、それで結構です」
と、ほどなくして、今度はやはり朝食時に顔を合わせたシェフがやってきた。
「マダム。ブッフェはいかがですか? すばらしい料理がそろっていますよ」
以下、同様の会話が続く。みんなやたらとブッフェを勧める。そしてみんな、やたらとフレンドリーである。わたしがサンドイッチを食べていると、マネージャーがジュースを持ってやってくる。
「マダム。よろしければこのライムソーダをお試しください。おいしいですよ」
ひと口、飲んでみる。安っぽい、炭酸水のジュース。朝のスイートライムジュースの方がよほどおいしい。なぜこの「人口甘味的」な味をわざわざ勧めるのか。米国的、だからか。これを本気でおいしいと思っているのか。謎めいているところがまたインドである。
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