SCENE 33: 思い出ホテルにチェックイン
DELHI, NOVEMBER 3, 2004

そして夕方。マルハン家をあとにして、タージ・マハル・ホテルへ。
2001年の夏、結婚式のとき。
日本の家族が訪れた最初の夜、このホテルのダイニングで夕食を食べた。

食前に供されるパンを齧りながら、「おいしい!」「小麦粉が違う!」
と、父が初めてそう言った場所。

夫がチェックインをしている間、あの夜のことを思い出す。


■極めて快適、サービスもよい、タージ・マハル・ホテルへ

タージ・グループのホテルは、名前が紛らわしい。

ムンバイにもタージ・マハル・ホテルがあるし、ここニューデリーにもある。もちろん、あの、世界遺産の「タージ・マハル」がある町、アグラにも、タージ・マハル・ホテルがある。

さて、わたしたちは今日から3泊、ここニューデリーのタージ・マハル・ホテルに滞在する。前述の通り、3年前の結婚式の折、家族が到着した日の夜、ここで夕食を食べた。わずかながらも印象的な思い出があるホテルである。

広々としたロビーフロアはとてもエレガントで、(ありがちな表現ではあるが)ドアを開け、中に一歩足を踏み入れた瞬間から優雅な気分にさせられる。チェックインカウンターは、幾つかのデスクとソファーが設けられており、1組ずつがゆっくりと腰掛けてチェックインできるのがいい。

タージ・グループのホテルは、過剰と思われるほどにスタッフが多く、そのスピードが緩慢なことを除いては、サービスが非常に丁寧で行き届いている。ホテルの部屋もすっきりと美しく、隅々までハウスキーピングがなされているが気持ちいい。

 

■そして夜はサリーを着て、親戚宅のパーティーへ

今回、サリーは3着、持参している。すでに1着はムンバイの会食時に着用した。今夜は親戚宅へ招かれているので、再びサリー着用のチャンスである。前回、バンガロールにあるマイソール・シルクの専門店で購入したサリーを着ることにした。

迎えに来てくれたティージビールの車に乗り込み、夫の従兄弟宅へ。

親戚や知人が20人ほど集まっての、賑やかなディナーパーティーだった。たっぷりの料理が用意されていたが、ケサールのランチをたくさん食べていたので、食事は軽くすませ、ワインなどを飲みながら親戚らと語り合う。

先月、ジョージタウンで夕食を共にしたワシントンDCのIMFに勤務している夫の「はとこ」も出張でデリーに来ており、パーティーに参加していた。

明日には米国に帰国する彼女、数カ月前、日本へ出かけたばかりのその母親、来週からブラジルのリオに出張の叔母、近々ヨーロッパ出張の叔父……。

ワシントンDCにいても、インドにいても、もうわたしの周りには地球を転々と飛び回る人たちで溢れていて、世界各国の都市名が、まるで同じ市内の町名を語るくらいの気軽さである。

この国に身をおいていると、ときどき、別の惑星に立っているような、茫漠とした途方のなさを感じる瞬間があるが、この親戚たちに囲まれていると、グルメだのショッピングだの映画だのと、なじみのある浮き世っぽさがほとばしっていて、居心地がいいような悪いような、奇妙な感覚である。

タージ・マハル・ホテルのロビーフロア。

毎日、異なる色のカーネーションが飾られていたエレベータフロア

柔らかな桃色に金色の刺繍が施されたマイソール・シルクのサリー


BACK NEXT