■村の暮らしを眺めながら、ゆっくりと、水路を行く
ガイドによると、このクマラコムの村には7000人の人々が暮らしているという。学校は2つあり、村びとは5年間、就学する。インド彷徨(1)でも記したが、ケララ州はインド国内でもっとも識字率が高く(90%以上)、人口増加率も低く、模範的な州であるという。かつては久しく女権社会だった。
さて、この村の生業は、農業と漁業。農業は主にケララ米の稲作。レッドライス(赤米)と呼ばれるケララならではの米は、ここでは年に二回、収穫される。つまり二期作が行われている。ココナツの収穫もまた大きな収入源であろう。
漁業は主に湖へ船を漕ぎ出して行われる。淡水魚、ロブスター、キングプラウン(大きなエビ)など。キングプラウンはまた、ラグーンの一隅で養殖も行われていた。
この村は、7、8年前に"The God of Small
Things"という名著を著した女流作家 Arundathi
Roy の生まれ育った故郷でもある。この本は世界的なベストセラーとなり、夫も読んで感銘を受けたと言う。わたしはまだ読んでいないので(本は夫が友人に貸したまま、戻ってこなかった)、バンガロールで買って読もうと思う。
■ペンを、チョコレートを乞う子供たち
村の光景はとても美しく、カメラにおさめたい場所ばかりだけれど、同時に人々の日常生活にカメラを向け続けるのは少々抵抗を覚えた。だから、間近に見える人には、笑顔を見せてくれたり、手を振ってくれる人にだけ、「写真を撮ってもいい?」とゼスチャーをして、撮らせてもらった。
子供達が、なにか声を上げながらこちらに向かって手を振るので、毎度、写真を撮られ好きなインドの子供達だろうと思って迷いなく写真を撮らせてもらったが、なんだか様子が違う。ガイドに彼らは何と言っているのか、と尋ねたら、
"Give me pen! Give me Chocolate!
"
と叫んでいるらしい。彼らは旅行者がボートから放り投げてくれるペンやキャンディなどを楽しみにしているのだとか。
「ペンを買えない程、彼らは貧しいの?」
「特に、困っているというわけではないんです。彼らは、外国人がもっている、書き味のいいペンが欲しいのです」
物を乞う子らは、単に屈託がないだけなのか。いずれにしても、彼らにカメラを向けるのは、よした。
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