2/21/2003 PART1
上の地図をクリックして見ていただくとわかると思うが、雪に閉ざされた山間に、鉄道が通っていること自体に驚嘆する。列車で山肌をぐんぐんと上りつつ、自然の圧倒的な迫力もさることながら、自分がただ座っているだけで「登山」できることに、改めて感じ入った。 念のため、わたしたちが訪れた場所は、地図内に日本語を入れておいた。●がついているのは、ベルナーオーバーラント三山で、左からアイガー、メンヒ、ユングフラウ。
今日はユングフラウから登山列車でユングフラウの山頂に近いユングフラウヨッホに出かける。標高3454m、「ヨーロッパで最も高い場所」である。この鉄道が最初に敷設されたのは今から100年以上も前のこと。
★写真をクリックすると拡大写真が現れます。
8時過ぎの列車に乗るため。6時半に起床。夕べのうちにホテルはチェックアウトしておいたので、スーツケースを引きずって駅へ。 山の稜線に、朝の月がひっかかっている。 |
駅では安価(1個3フラン。2ドル程度)で、24時間、荷物を預かってくれる。スーツケースなどはここに置いて、荷物を最小限にして列車に乗り込む。 |
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スイスに数日滞在して観光するなら、鉄道のパスを買った方がいいだろう。わたしたちは滞在が短かったので買わなかったが、登山鉄道などは結構高い。無論、普通の列車とは意味合いが違うから、高くて当然という気もするが……。 |
グリンデルワルド-ユングフラウヨッホ間の切符は早朝の便が往復100ドル弱。9時以降は2倍の料金になる。 車内は観光客のほか、スキーヤーの姿もみられる。 |
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途中の駅で、どやどやとスキーヤーたちが乗り込んできた。 わたしは高校時代の修学旅行で長野の志賀高原へ行き、スキーをしたことが一度だけある。あまりいい思い出がなかったせいか、以来一度もスキーをしたいと思ったことがない。第一、寒いのが苦手だし。でも、彼らの様子を見ていると、なんだかとても楽しそうに思えてきた。 |
これがユングフラウヨッホ行きの登山列車。 |
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列車は車輪のほかに歯車が中央についているらしい。歯車で歯形のレールを「噛みしめつつ」上るわけだ。 |
まだ太陽が昇りきっておらずあたりは薄暗い。太陽と入れ替わるように、月がだんだん沈んでいく。 |
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夏の間は緑いっぱいの山肌も、今はひたすらに雪景色。駅の建物も雪に埋もれてしまい、その姿がよく見えない。 向こうの山に、朝日が当たりはじめている。 |
ユングフラウヨッホまでは6つほどの駅を停車する。半分以上の駅に、レストランの建物が併設されている。 スキーヤーたちは好みのポイントを選んで駅を下り、斜面を滑っていく。 |
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さて、いよいよユングフラウヨッホ駅に到着だ。日本人観光客のために日本語の案内もしっかり。でも、わたしたちの滞在中は日本人より、チャイニーズ、コリアンの観光客の方が多かった。 ユングフラウヨッホにはいくつかのレストランやカフェ、売店のほか、氷原や展望台、氷の宮殿などの見どころがある。 |
8時18分にグリンデルワルドを出た登山列車は9時53分にユングフラウヨッホに到着。1時間以上かかったが、途中の風景の楽しみながらだったので、少しも退屈することはなかった。 帰りは12時発の列車に乗る予定。2時間は長すぎるかと思ったが、瞬く間に時間が流れていった。 |
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まずは氷河の展望所へ。外に出るなり、凍て付くような風が吹き荒れていて、寒いのなんの! しかしすばらしい快晴で、青空が目に染みる! それにしても、ユングフラウの山頂(4158m)が、手に届きそうだ。 |
山の上に立っているのが「スフィンクス」と呼ばれる展望台。1996年に完成したという。3571m地点まで、高速エレベーターで108mを一気に25秒で登る。ここからは360°の一大パノラマが楽しめた。 |
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ヨーロッパ最大・最長のアレッチ氷河(約22km)を見下ろす。 この氷河はユングフラウヨッホの直下から流れ出しているという。今は何もかもが雪に覆われていているが、夏になると山肌と氷河の違いがもう少しくっきりと見えるのかもしれない。 |
こんな場所に来る予定ではなかったので……。余りにも軽装過ぎる悪い見本。自然をなめてはいけません。こういう場所に来る際には、帽子、手袋、マフラーなどの防寒具を整えた上に、雪の反射で目をやられないよう、サングラス、それに日焼け止めも必携です。靴もすべりにくい軽い登山靴を履くのがいいでしょう。 無論、ずっと建物の中にいるというのであれば、その限りではありません。 |
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どこを向いても雪を戴いた山、山、山。写真と見比べてはみるのだが、どれがメンヒで、アイガーで、ユングフラウなのか、今ひとつよくわからない。そもそも、名前なんて、どうでもいいのだ。多分。 |
寒さが苦手な人は、建物の中からでも十分に景観を楽しむことができる。 |
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目が開けられない。笑っているのか引きつっているのかわからない表情。 外に出るなり瞬間冷却されるほど、猛烈に寒いのだ。でも、景色を眺めたくて果敢に外へ飛び出す二人。 |
はるか彼方に、ドイツの黒い森が広がっている。らしい。ヨーロッパで一番高い場所に立つと、ヨーロッパが狭く感じられる。 |
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氷原で体温を奪われたので、しばし建物内を観光することにした。 ここはアレッチ氷河の下、深さ約20mの場所に造られたアイスパレス(氷の宮殿)。青白い氷の洞窟の中に、さまざまな氷の彫刻が並んでいる。彫刻そのもののクオリティーはどうみても「今ひとつ」だが、フロアも壁もすべて氷の中にいる、ということが妙に楽しく思えた。 |
フロアも氷でできているので滑らないよう気をつけて歩かねばならない。 |
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これはクマの彫像。とA男。 |
こちらはワシの彫像。とわし。 ……。 |
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こういう狭苦しい洞窟をくぐり抜けたりするのが、妙に楽しい。そういえば、昔、富士山に行ったとき、「胎内洞窟」とかいうのに潜ったことがあるな。あっちの方がもっと狭くて窮屈で「洞窟的」だった気がする。 |
氷のベンチに座って。ポーズをとるのはいいが、滑りやすいし冷たいしで、早く撮ってくれ! という感じ。 |
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身体が温まったので、今度は別の氷原に出てみることにした。 なんだか太陽がとても近くに感じられる。日差しがビシビシと降り注いでくる感じ。 |
ここから望むアレッチ氷河の眺めもまたすばらしい。ここから二人のスキーヤーが滑り降りていった。 気持ちよさそ〜! |
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スキーヤーのおじさんが、写真撮影をかって出てくれた。しかしもう、顔が凍て付いて、笑っているんだか歯を食いしばっているんだか。 A男は比較的、平常顔だけれど。 |
あっというまに1時間半が過ぎ、列車の時刻まで30分。売店でポストカードを買い、日本の家族宛にメッセージを書く。コーヒーとヨーグルトの軽食。A男はまぶしさと寒さにやられて頭痛がするらしく、急に無口。自然をなめてはいけない。きちんと準備を整えるべし。 |
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頭が痛いといいつつ、チョコレートを買ってきたA男。「甘い物は控えなきゃ」などと言いつつも、食後のデザートにと銀紙を巻いたまま、ばりっと割ったら、犬ぞりの絵柄があることに気がついた。一応、ユングフラウ記念と言うことで撮影を。ひび割れているけれど。 |
さて、帰りの登山列車の車窓から。すっかり太陽は昇って、空気はすみわたり、なんともメリハリのある鮮やかな風景。 山腹を走る列車も、スキーヤーも、まるで小さなおもちゃのように見える。 |
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途中の駅がすっぽりと雪に埋もれている。 |
ここはクライネシャイデックの駅。この駅は、別方向から来る列車が乗り入れる「乗換駅」のため、大きくてレストランなどの設備も充実している。ここを拠点にするスキーヤーも多いようだ。 |
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クライネシャイデックの駅はスキーヤーたちでごったがえしていた。95年の夏に来たときは、この辺りをトレッキングしたのだが、あたりは一面の緑、そこここに高山植物が咲き、すばらしい眺めだった。やっぱり夏に訪れた方がいいかも。 |
ここでグリンデルワルド行きの列車に乗り換える。駅で荷物を受け取り、5分後に出発する列車でインターラーケンへ行くのだ。それにしても、列車の接続時間のタイミングがいいのがありがたい。 |
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スキーのファッションに身を包んだ子供たち。かわいい。 |
スキー愛好家には、きっとすばらしい場所なのだろう。しかし、スキーをしないのなら、夏に訪れ、緑の草原をハイキングする方が多分、楽しいと思う。 |
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山肌の至る所に、スキーヤーたちがすべった名残の、幾筋ものラインが交錯している。 |
スキーができない人は、橇を借りて滑り降りることもできる。A男はやりたがったのだけれど、服装が不完全だったので今回は見送り。 |
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青空ではなかったら、まるでブリューゲルの絵の中の風景みたいだと思う。雪の中に点在する家々が、なんともいえずいい。 |
どの家も、同じような建築様式と屋根の角度。きっとこの造りが、雪の重みに強いのだろう。 |
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急勾配を下る列車。グリンデルワルドの駅は目前だ。 |
短時間ながら充実のユングフラウヨッホ観光を終え、次は二つの湖に挟まれた観光リゾート、インターラーケンへ。 インターラーケンを訪れる目的、それは、A男が昔から欲しがっていた「鳩時計」の購入である。 夕方のチューリヒ行き列車に間に合うよう、買い物は2時間以内に! |