SWITZERLAND / GRINDELWALD-JUNGFRAUJOCH-INTERLAKEN-ZURICH
スイス/グリンデルワルド-ユングフラウヨッホ-インターラーケン-チューリヒ

2/21/2003 PART2


いよいよ今回の旅行も終盤だ。明日は早朝の便でチューリヒを発たねばならないが、チューリヒに行く前に、インターラーケンに立ち寄ることにした。目的はA男が以前から欲しがっていた鳩時計の購入だ。

日本語では「鳩時計」だが、英語だと「Cuchoo Clock」、すなわち「カッコウ時計」。というわけで、以下、カッコウ時計と呼ぶことにする。

カッコウ時計はもちろんチューリヒでも買えるのだが、移動しているうちに夕方になり、店が閉まってしまう恐れがあったので、ここで買うことにした。

A男は12歳の時、家族で初めてスイスを訪れたときカッコウ時計に心を奪われ、父親に買ってくれと懇願したものの却下された。そのときの思いがまだ胸の奥底にくすぶっていたらしく、昨日、グリンデルワルドの土産物店で時計を見た瞬間、「買いたい!」と切望、今日の買い物となった次第である。


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インターラーケンは古くからのリゾート地。重厚な建築の高級ホテルが点在するほか、スイスならではの高級時計などを扱うブティック、免税店、有名ブランドのショップなども多い。

こちらもホテルの建物。

日本人の観光客が多いせいか。日本人から寄贈されたという日本庭園「友好の庭」というのもあった。

いやいや、こんな撮影をしている場合ではない。わたしたちはよりよいカッコウ時計を求めて、あちこちの店をのぞき、商品比較をしたうえで購入しなければならないのだ。

でも、A男が情報収集をしている間、店先などをうろうろ。エーデルワイスを抱えたクマの彫像。

A男、いつになく早歩きで、あちこちの店に視線を走らせる。真剣だ。いや、早歩きといいながら、わたしの方が先を行っているな。

こういうとき、いつもに増して、歩きが早くなるわたし……。

木造りの、素朴な玩具を揃えた店を発見。角が丸い積み木など、温もりのあるおもちゃがたくさん揃っていた。

数軒を訪れた結果、スイス製ではなく、カッコウ時計の元祖であるドイツ製(黒い森/シュヴァルツヴァルト時計)を扱うこの店で購入することに決めた。見た目、オルゴールの音、予算、あれこれと検討の末、上段中央の時計に決定!

駅へ戻る途中、免税店でハンカチを購入。綿100%のタオルっぽいハンカチ。日本の母もこれが好きで、母から何枚かもらっていたのを愛用してたのだが、今回5枚購入。これもスイス製ではなくドイツのFEILERという会社の製品だった。

インターラーケンを5時38分に出た列車は、再び首都ベルンを経由して東へ。7時56分にようやく旅の最終地点、チューリヒに到着。この駅も天井が高くて広々としていて、そこはかとなく哀愁があって、とてもいい感じ。

わたしは、ベルギー出身のシュールレアリズム画家、ポール・デルボー(Paul Delvaux)が描く絵の背景に出てくる鉄道駅や線路、列車にひどく心を引かれる。そこには駅特有の「陰」のパワーがあるのだ。「別れの場所としての駅」のイメージが、沈鬱でいい。

チューリヒに来たのは2度目だが、初めて訪れたときには、中心地からはずれたホテルに泊まって、そのままドライブ旅行に出発したから、街を歩くのは今回が初めてだ。想像していたよりも、ずっとすてきな夜景を持つ街に感激する。

以前訪れたときも感じたが、スイスには、歴史の重みを感じさせる重厚なものとポップで現代的なもの、そして、大自然の圧倒的な迫力とが混在した、とても一言では書ききれない、複雑な素顔が潜んでいる気がする。永世中立国の立場を堅持し続け、何にも属さない強さなど。

A男にとって、チューリヒは思い出深い町。彼がボストンの大学に通っていた頃、夏休みのアルバイトでこの町のスイス銀行に2カ月ほど働いていたらしい。

学生時代のバイトといえばレストランのウエイトレスだったわたしとは、なんだか全然、世界が違っていて面白い。

疲れ切っていたはずなのに、A男は懐かしい町を訪れて俄然元気になってきた。わたしは明日の朝4時起床が気になっていて早く寝たいのだが、しかし街を歩きたいという気持ちもあって、複雑な心境。

またもやお菓子やさんに吸い込まれる。パッケージはチューリヒの町を描いた絵が。

これはビスケットのようなお菓子。

やっぱりこの国には時計台が多い。それにしても、これらの塔の、なんと美しい姿であることよ。時計台は昼よりも、夜の方がずっと魅惑的に見える。

特に文字盤が黒で金色の針の時計にわたしは心を引かれる。

お洒落な雑貨店のショーウインドー。これはプレスリーやウォホールの顔が浮かび上がった石鹸。

キュートなハート型の石鹸も。せめてあと1泊あれば、この街もゆっくり見て回ることができたのにと、少々残念に思いつつ……。

ふと路地を振り返ると、ドキッとするような赤い色をした尖塔。

こういう色彩感覚がまた興味深い。

昼間見るとどういう感じなのだろう。やはり、もう一日、滞在したかった。

今日の夕食はどこにしよう……。インターラーケンで軽食をとっていたのであまりお腹は空いていないのだが、でもなにも食べないわけにはいかないし……。

A男がかつて通っていたという繁華街に行くことにした。「殿方」向けナイトクラブが点在していて、さすがヨーロッパ、裸の女性の写真などが店頭にバンバン張り出されている。A男、喜ぶ。

結局、かつてA男がよく利用したという「スパゲティファクトリー」に行くことにする。ここで軽くサラダでも食べ、パスタを一皿シェアするとしよう。

店内は天井が高くシックなインテリア。照明の具合がとてもよく、窓際に座っている女性(胸の空いた黒いシャツを着ているロングヘアの女性)が中世の絵画に出てくるモデルのように見えて、本当に、はっとするほどきれいだった。ついつい、何度も視線を走らせてしまった。

でも、バスルームに立ったとき、間近でちらりと見たら、鼻に小さなピアスをつけた、ファンキーな女性だった。

まるでチューリヒのイメージを、体現しているような人だった。

●番外編●翌日は、早朝、空港に向かったものの、予定していたパリでの乗り継ぎ便がキャンセルになっており、結局昼頃出発するスイス航空の直行便で帰国した。そして翌日。さっそく自宅の壁に、買ってきたばかりのカッコウ時計を取り付ける。

あれこれと検討しただけあって、部屋の雰囲気にもぴったり合う。時間の数だけカッコウが鳴き、木こりが斧を振る。そのあとオルゴールが流れ、音楽に合わせてカップルが踊り、水車が回る。よかったよかった。

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