COTE D'AZUR / NICE
コート・ダジュール/ニース

2/17/2003


本日、月曜日から3日間、A男がカンヌのカンファレンスに参加している間、わたしは一人でコート・ダジュールを気ままに旅する。

ちなみにこのカンファレンスは、テレコム関連では世界最大規模らしく、毎年この時期にここで開かれている。映画祭の時期には及ばないにしても、ホテルはビジネスマンたちの予約でいっぱいだ。

街のあちこちで、海辺のリゾートには似つかわしくない、スーツ姿、首からネーム・タグをぶら下げた人々が行き交う。そんなカンヌを離れ、晴天の今日は、列車でニースまで出かけることにした。


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昨日に比べると随分いい天気。でも相変わらず風が冷たい。A男が一緒に朝食をというので、彼が受け付けでネーム・タグなどをもらっている間、外で待つ。ちなみに全イベント(4日間)参加の場合は何と約2000ドルの参加費だとか!

朝食はゆっくりしている余裕がなくて(わたしはゆっくりしてもよかったのだが)、クロワッサンとカフェラテで取り急ぎ。A男はエスプレッソを飲んでいた。食べている最中にそうだ、写真撮影だと思い出し、よって食べかけで失礼。

ここがカンファレンスの会場。毎年映画祭などが行われるのもここだ。

日本企業からは、18日にSONY ERICSSONの井原勝美氏、19日にはNTTの立川敬二氏の講演が行われる。

後日講演を聴いたA男曰く、井原氏の講演はカリスマ性を感じさせ興味深かったが、立川氏は英語が極めて聞き取りにくく、内容も平坦で、プレゼンテーションがよくなかったとのこと。

高級ホテルの前で立ち話するカンファレンスの参加者たち。ホテルの宿泊費は期間中高騰。わたしたちは12月に予約したが、どこも満室で慌てた。何軒もあたった結果、現在宿泊しているホテルの「最後の一部屋」を予約できた。しかし、四つ星といいながらどう見ても三つ星としか思えないホテルで、1泊250ドルもする。

A男の知り合いは今年に入って予約手配をしたら二つ星が1泊600ドル(!)を請求してきたというので、しかたなくモナコのホテルを取り、「通勤」しているらしい。

カンファレンス会場の向かいのカフェ。期間中はこのように「モトローラ」のステッカーが貼られ、名前も「MOTO CAFE」に一時名義変更。いったいいくらで束の間「身売り」しているのだろう。

沖に停泊している客船の船体にもドイツ企業「シーメンス」の広告が……。

ちなみにわたしはシーメンスのコードレスフォンを使っているが、トラブルシューティングの対応が非常によかった。

さて、A男とわかれ、わたしは鉄道駅へ。途中でマリアージュ・フレールのティーショップを発見。ここのお茶缶はとてもすてき。東京の青山に店がオープンしたとき、真っ先に取材に行った。「マルコ・ポーロ」もいいけれど、「エロス」の香りのかぐわしさも魅力的。

ここはカンヌの駅。当初はANTIBES(アンティーブ)に行く予定だったけれど、観光案内所でもらった資料によるとアンティーブにあるピカソ美術館が休館だったので、ニースに変更した。ニースのシャガール美術館は今日、オープンしているのだ。

久しぶりに乗るヨーロッパの列車。快速の列車はシートもきれい。9年前、3カ月間、ヨーロッパを一人で放浪したとき、ユーレイルパスを携えて、何度も列車に乗った思い出が、まるでつい最近のことのように蘇ってきた。

ここがニースの駅。5年前にA男とローマからバルセロナまで地中海沿岸を旅したときも、この駅を通過した。でも実際に街に足を踏み入れるのは、12年前にドライブ取材で訪れて以来のことだ。

ニースの駅前ターミナル。取材で来たときは、海岸沿いを少し歩いたきりだったから、じっくりと歩くのは今回が初めてだ。どんな街だろうか……。まずは、街の北東部、小高い丘の上にあるシャガール美術館を目指す。

美術館までの道すがら、記念撮影。

街角の小さな商店。イスラム教徒向けのハルル・フードを扱う店だ。ここは基本的に肉屋らしい。

ふと振り返ると、「味のある」路地がある。ヨーロッパならではの、ひっそりとした光景。

光と影の対照が、とてもきれいだ。

車ではぐるりと大通りを迂回せねばならないが、徒歩だと階段を上ったりしながら抜け道をたどって美術館まで行ける。

通りすがりのおじいさんに道を尋ねたら、フランス語とゼスチャーで、とても丁寧に教えてくれた。
「ここを
ヒュッと曲がったらヒュッとたどりつく」みたいなことを言っているらしい。近道を連想させる「ヒュッ」っという擬態語だけが、よくわかった。

オレンジの木がある家や、糸杉の木々を眺めながら、少し息を切らしつつ歩く。

そしてたどりついた、小高い丘の上にあるシャガール美術館。閑静な住宅街の一画に、ひっそりと、静かに。

館内もとても静か。「日本人の若い女性二人組」客がいっぱいいるのにとても驚いた。ゲストの約3分の1は日本人だった。この美術館には主に老年のシャガールの作品が収められている。ちなみに彼は長寿で97歳(1887-1995)まで生きていた。

ミュージアムの外壁に施されたモザイク。コート・ダジュールの風物が描かれているようだ。

シャガールによるステンドグラスがはめこまれた、小さなコンサートホール。こういう場所で音楽を聴くと、同じ演奏でも違って聞こえるに違いない。

わたしがシャガールの絵を初めて見たのは幼年時代。両親が自分たちのために買った世界美術全集を、わたしは好んで見ていた時期があった。CHAGALLとDALIは同じ1巻に収められていて、ダリの絵に心を奪われていたわたしは、この巻を気に入って、今でもここに持っている。

「シャガールはロシア系ユダヤ人である。彼の芸術にはロシア系ユダヤ人の生活があり、迷信があり、詩があり、音楽があり、色彩があり、幻想があり、苦悩があり、祈祷があり、享楽があり、淫逸がある……(仲田定之助)」  

気に入った絵。この絵のポストカードを両親宛に送った。

気になった絵。

杖をついて、犬(羊?)と共に歩いている逆さまの人物が、忘れがたい友人を思い起こさせて、しばし見入った。

こんなにしんみりとしたシャガールを見るとき、しかしわたしはある歌を思い出す。それは一昔前、流行った歌の一節「あなたがわたしにくれたもの〜 シャガールみたいな青い夜〜。大好きだったけど〜 彼女がいた〜なんて〜」→

この「大好きだったけど〜 彼女がいた〜なんて〜」の部分を、昔、嘉門達夫氏が替え歌にして歌っていた。一度聞いただけでその台詞が耳に貼り付いてしまった。
大助だったけど〜 花子がいた〜なんて〜」……絵を見ている間中、この歌詞がリフレインして鬱陶しいのなんの。嗚呼!

替え歌っていうのは、思うより、罪深いものかもしれない。

大助・花子のシャガール美術館を出たあと、海辺に向かって歩く。

そろそろ1時。お腹が空いてきたころだ。

通り沿いの建物を眺めながら歩く。時折、なんともいえず美しい色合いのビルに出くわして、ハッとさせられる。

海岸のそばで「のみの市」が開かれていていた。ここをしばらく散策した後、ランチをとることにする。

陶器や絵画や小物など……、さまざまな調度品が市を彩っている。

この小さな人形たちは?
人形に紛れている黄色いぶつぶつの鳥はなに?

海のものとも山のものともつかない絵画が並べられている。店番の人達も、のんびりと、ぼんやりと。

サンドイッチを食べている人もいる。

スペイン風? それともインド風? いや、タイ風か? 国籍不詳の人形たち。

これはどうみても日本髪。かなり妙な裸婦像である。モデルは日本人か。

古びてはいるけれど、しかし右側の黄色い建物の色が気に入った。とてもいい感じの黄色だ。左の建物の、薄い黄色とのバランスもいい。

ふたつして、青空によく似合う色。

日差しが暖かだったのでテラスで食事をすることにした。

ランチはサラダと赤ワイン。トマトがたっぷり、コーンやチーズもたっぷりの、食べ応えのあるサラダ。

ランチを終えた後、再び街を歩く。

陽光を浴びながら、ワインを飲む人、コーヒーを飲む人、食事をする人……。

テキスタイルのショップにて。テーブルクロスの一部。オリーブの実やひまわりなどの花、セミ、レモンなどの柑橘類など、プロヴァンスの風物をモチーフにしたものが多い。

歩きながら店のショーウインドウをのぞき込む。

これはプロヴァンスの工芸品。昔の人々の暮らしぶりを偲ばせる素朴な人形たちだ。この人形は結構大きくて、高さは20〜30センチある。

地中海沿岸の食卓に不可欠なオリーブオイル。缶にも個性があってすてき。これはウサギのマークのオリーブオイル。

おいしいけれど、高カロリー高コレステロールで危険! なフォアグラの缶詰。

これもオリーブオイルの缶。とてもプロヴァンス的な色柄だ。

フランスの郵便局のイメージカラーは濃紺と黄色。この配色がいかにもフランスという感じ。この配色を使ったロゴマークは、町のあちこちで目にする。フランスは「濃紺」が美しい。

やたらに小さい車。その名も「スマート」(スウォッチ製)。初日、空港で車を借りようとしたらオートマティックはこの車しかなく、しかも1日120ドルという信じがたい料金。いくらカンファレンスがあるからって高騰させすぎ。結局、借りず。

コート・ダジュールの名の通り、ここは目にもまばゆい「紺碧海岸」。

海辺にはいくつかのレストランがテーブルを出していて、こうして波の音を聞きながら、海風を受けながら、食事が楽しめる。

ああ、なんてすがすがしいんだろう!

この海を東に辿っていくと、モンテカルロ(モナコ)、メントンなどの街があり、そしてイタリアの国境となる。

列車は国境を越え、海沿いを走る。国境を越えても、海の色は同じ。

ニースで最も有名なホテルのひとつ「ネグレスコ・ホテル」の外観。

一応、おさえておいた。

「ネグレスコ・ホテル」の大広間 "The Salon Royal"。

中央に下がっているのはバカラのクリスタル製シャンデリア。まばゆい!

今週末から始まるニースのカーニバル。街はその準備で忙しそうだ。イベント用の特設ステージも設営されている最中だった。ちょうどカーニバルの始まる頃にここを離れねばならず、残念!

随分と歩いたので、ちょっとカフェで休憩することにした。……と、大通りに面した角に、気になる店を見つけ、思わず店内に吸い込まれる。

店内にはおいしそうなお菓子がいっぱい。これを食べずに見過ごすことは不可能だ。コーヒーを飲むつもりだったのだが、そうは問屋が下ろさない状態に陥ってしまう。

パイ生地やタルト生地の残りを焼いて砂糖をまぶしただけ、という感じの素朴なお菓子もおいしそう。名称不明。

あそこにも、ここにも、見るからに愛らしきプチ・ガトーが!

コーヒーだけにしようか、やっぱり食べようか、店内をうろうろしつつ迷う。

ちなみにこういう素朴なケーキ類もある。でもどれも一切れがとても大きくて、どっしりとした重量感があり、食べ応えがありそうだ。一人で食べるには危険すぎる。

一口くらいなら味見をしたいとも思うが、一切れ全部はちょっとねえ……。と葛藤。

(うううぅぅむ)と悩んだ末、プチ・ガトーを二つ、食べることにした。ストロベリーのタルトとシュークリーム風。

いずれも二口サイズほどだが、それを四口ぐらいでゆっくりと味わいつつ食べる。甘さもほどよくおいしかった。

カフェを出て、駅までの道すがら、あちこちの店頭をのぞきつつ歩く。このタイプのサンドイッチは、フランスのランチの定番のひとつ。ハムとチーズのサンド(シンプルでおいしい)やモッツアレラチーズとトマトのサンド(写真)など。素材の味が決め手。

スーパーマーケットで見つけた「パンピザ」用のパン。かなり大きめ。グラースのカフェで食べたランチも、このタイプのパンを使用していたものと見られる。

こちらはきっちりと長方形のサンドイッチ用パン。ピシッとしたサンドイッチを作りやすそうな形だ。

夕暮れのニース駅。一日の仕事を終え、帰宅する人たちで駅はいっぱい。快速ではなく各駅停車に乗ったので、車両も一般的だった。車内でもタバコを吸う人が多いので、煙がきつくて実に辟易した。全身がタバコ臭くなってかなわない。

カンヌでも、ついついお菓子やさんのショーウインドーをのぞき込んでしまう。

見るからにおいしそうなフルーツのタルト。チョコレートタルトの上にはバナナのスライスが載っている。一つのサイズが結構大きめ。

ニースの名物、Fruits Confits(フリュイ・コンフィ)。フルーツを砂糖漬けにしたもの。写真はキンカンのようなオレンジの砂糖漬け。

マロンやフルーツのシロップ漬け。容器がおしゃれだからお土産にいいかも。味の方は不明……。

迫力あるチョコレート2種。

これはエクサン・プロヴァンスという町の名物、Calisson d'Aix(カリソン・デクス)。アーモンドのペーストに砂糖をコーティングしたもの。以前、エクサン・プロヴァンスに行ったとき食べたが、あまりおいしいとは思わなかった。

日本人にもおなじみの、フランス菓子「マロン・グラッセ」。高級菓子のイメージあり。

これは多分、アーモンドのヌガーだと思う。これも食べたことがないので味の方はわからないが……。

連日のフレンチにちょっと胃袋も疲れ気味。ホテルのフロントの女性に勧められ、近所のタイ料理店で夕食をとることにした。

まずはタイのシンハービールで乾杯。トムヤンクン(スープ)、パッド・タイ(ライスヌードル)、サーモンをバナナリーフで巻いて蒸したものなどを食す。どれもなかなかにおいしかった。

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