■ゆっくりと目覚め、午後、知人と会う。
ラスベガス。そこはカジノのパラダイス。なのに、だ。わたしはギャンブルには、とんと興味がないのである。ロメイシュを除く、ほか3名も、ギャンブル経験皆無。
街中が「ギャンブル一色」にも関わらず、まったくそそられることもなく、数回、クオーター(25¢硬貨)のスロットルマシーンに手を出した程度である。
「ああ、なんだか無駄遣いだわ」
などと思ってしまうところからして、ギャンブラー失格である。従って、この件については、ギャンブラーな友人らから非難ごうごうの恐れがあるため、もう触れまい。
さて、ラスベガスといえば、「ブッフェ料理」が名物だと噂に聞いていた。ホテルごとに特色のあるブッフェ料理がリーズナブルに味わえるとのこと。
この日、早朝からA男と「家族問題」にまつわる派手なバトルを展開したこともあり、我々は朝ご飯を食べる機会を逃していた。ラスベガスに来てまでバトルとは。しかし、バトルが起こって当然の、わけわからん家族旅行でもあるわけで、致し方ない。
心身共に、エネルギー、著しく消耗。
腹が減っては戦はできぬ。ということで、休戦状態の我々は、ミラージュのランチブッフェに行くことにした。とはいえ、連日の重い食事に辟易している身の上、そんなにたくさん食べられたものではない。
出発前、ミラージュに泊まったことがあるという友人のR子さんより「ミラージュのブッフェのプライムリブ(ローストビーフみたいなもの)はおいしいから絶対食べて来てね。わたし、すごくたくさん食べた」と伝授されていたので、わたしもまずは一切れ食べることにした。
柔らかくて、ジューシーで、確かにおいしい。
おいしいが、どう考えても、そんなにたいそう、食べられるものではない。「すごくたくさん」とは、いったい彼女、どれくらい食べたのだろう。
気になったわたしは、帰宅後、電話で彼女に確認した。なんとR子は10枚近く、彼女の夫はそれ以上、食べたとのこと。わたしの食欲も相当なものだと思っていたが、全くもって、かなわんな。
日本人らしからぬR子夫妻の食欲に脱帽である。
さて、ランチの後、ニューヨーク時代、仕事をもらっていた旅行代理店の担当者だった男性と、数年ぶりに面会。ミラージュに隣接するトレジャーアイランドというホテルのスターバックス・カフェでしばしコーヒーを飲みつつ語り合う。
彼が勤めていたラスベガスの支店が、数カ月前、突然閉鎖されたとかで、今は自分でビジネスを立ち上げたばかりとのこと。
短い時間だったが、あれこれと事情を聞くにつけ、大きな会社の不条理とも思える支店閉鎖のいきさつを知り、人ごとながらも大いに憤り、かつ呆気にとられた。
彼とわかれた後、ホテルに戻り、しばらくくつろいだあと、プールでひと泳ぎしてきたA男とホテル巡りに出かける。それにしても、外はまるでサウナのような暑さ。乾いてはいるものの、ともかく暑い。にも関わらず、信号待ちがやたら長くて、気が遠くなりそうになる。向かいのベネチアンに行くのも一苦労だ。
ベネチアンをはじめ、ベラージオ、パリス、ニューヨーク・ニューヨークなど派手なホテルを見学してまわる。
どのホテルも、カジノは当然のこと、ショッピングモールやレストランが充実しており、「特にギャンブルをせずとも」かなり楽しめる。
折しもあちこちでセールをやっていて、靴や服など、思いがけず購入する。ギャンブルで勝ってこそのショッピング、であるべきだろうにと思いつつ。
ベラージオ内のジェラート・ショップの充実ぶり(種類がたっぷり)に目を奪われ、思わず一番小さいサイズを購入。一番小さいのに相当に大きくて、二人でわけて食べたがかなりの食べ応えであった。
ラスベガスにはほかにもアトラクションやら見どころなどがあれこれとあるのだが、ともかく、今回の旅のわたしは、なにかしら「受け身な姿勢」が抜けきれず、ラスベガスの魅力を満喫しようと言う熱意にかけている。まあ、それも家族旅行なのだから、やむを得まい。
夜は、本当に、久しぶりに、A男と二人きりでの夕食である。一日くらいは丸一日、インド軍団と別行動させてくれと彼に頼んでのこと。でも、どの店で食べるべきか、リサーチをせぬまま、ホテル「パリス」をうろうろと歩き、結局、ブッフェの誘惑につられてディナーもまた。
確かに、それなりにおいしい料理もあるが、しかし、これといって「格別だ!」という料理もなく、なんとなくメリハリに欠けるブッフェではあった。というか、食に対する欲求が、かなり下降していたのね、きっと。
とか何とか言いながら、帰り際、パリの高級菓子店「ルノトール」のショップに吸い寄せられ、彩り美しいケーキに見惚れる始末。
「見るだけだからね」というわたしに
「エクレアが食べたい!」と聞かぬA男。エクレアが好物ですのよ、宅の主人。
結局、2つ、エクレアを購入してホテルに戻る。しかし、満腹でさすがに食べきれず、冷蔵庫にしまい、明日食べることにする。
11時頃、ホテルに戻ったら、ロメイシュから電話。ブラックジャックをやりに行こうとA男を誘っている様子。A男が「美穂もおいで」とうるさいので、疲弊しきった身の上ながら、ついていく。
まずはロメイシュが「手本」を見せる。地味に25ドルから賭けて、ロメイシュが50ドルくらいに増やしたのを、A男はすべて失い、更に20ドル失って、それで終了。
カジノの「雰囲気」だけは味わえたようである。が、失った70ドル近くを何度も「勿体なかった!」と悔やむ夫よ。ギャンブラー失格である。まあ、失格でよかったけど。
しかし、それにしても、こんなにたくさんの人が、じゃんじゃかじゃんじゃかギャンブルしているという現実が、どうにも不思議である。お金って……。
★余談:ロメイシュはA男を誘って「トップレスショー」に行きたかったようである。ったく。
まかり間違ってもまじめなスジャータやラグバンの前では言えなかったらしく、息子に声をかけた模様。
「どうしようかな〜」とわたしに相談するA男に(相談すな!)、「行ってくれば?」と冷たく言ったのだが、結局、時間が合わず行けずじまいだった模様。
ちなみにラスベガスを歩いていると、際どいチラシを配る人たちが並んで立っている。そんな街ゆえ、売春が合法だと思われている節があるが、実際はそうではない。
なんでも、ネバダ州のラスベガスから約80キロほど離れたカウンティー(郡)では売春が合法化されているらしいが、ラスベガスはそうでないとのこと。
殿方は、ネオンに幻惑されることなく、くれぐれも、節度を持って、行動されたし。