坂田マルハン美穂のDC&NY通信 Vol. 121 8/31/2004 |
日本の夏も、米国東海岸の夏も、そろそろ終わりに近づいて来ました。福岡はまだまだ暑いとのことですが、東京あたりの気温は下がったようですね。暑すぎた夏、ほんとうにお疲れさまでした。 さて、本日は、8月31日。わたくしの誕生日であります。39歳。30代最後です。うふふ。去年の今日は何をしていただろうと、ホームページを遡ってみたところ、去年の今日も、メールマガジンを発行していました(祝福を乞うているのか?)。 そしてインドの家族からの電話のことや、通い始めたばかりの学校(ジョージタウン大学の語学学校)のことも書いていました。あれからすでに、一年が過ぎてしまったとは。一年前と比べて、わたしの英語力は果たしてどれほど向上したのか、大いに怪しいところが片腹痛いけれど、それはさておき。 今年もまた、先ほど、インドの実家(ニューデリー)と、義姉スジャータ(バンガロール)から電話がありました。ちなみに我が母からは、日本時間の31日正午、こちらの夕べ11時、わたしが生まれた時刻に電話がありました。 インドの実家からの電話は、まず義母のウマが出て、そこで長話をしていると、横からダディマ(おばあちゃん)が受話器を奪い取るようにして電話をかわり、しかし英語があまりできないため、会話が成立せず(Happy birthday!/ Love!/ How are you?/ Good! などを連発。我が母といい勝負)。 にもかかわらずかなり長いこと、繰り返し同じ語句をしゃべり続けるのを、こちらも根気よく、付き合う。それを見かねた義父ロメイシュが電話をかわる。だいたい、いつもこのパターンです。 ロメイシュが「今日は、どこか出かけるの?」と訊く。A男がどこかのレストランの予約を取ってくれているらしいことを告げると、 「そう。ディナーに行くの? よかったね。楽しんでおいでね。キャンドルライトの灯ってるテーブルでね」 と、これまたいつもの台詞。どうやらロメイシュには「特別な夜=ロマンティック=キャンドルライト」という図式が成り立っているようです。微笑ましいです。 さて、今回は、ビーチで過ごした週末のことを書きました。誕生日に因んで、少々精神的なことを書こうとしたのですが、だんだん内容が重くなってきたのでやめました。また、別の機会に、爽やかに書こうと思います。 すでにホームページの日記には書いているので内容一部(かなり)重複しますが、ご了承ください。
●この夏はじめての海辺。デラウエア州のレホボス・ビーチへ 先々週の金曜から日曜日にかけての2泊3日。この夏初めてのビーチへ行った。5月に、日本行きのため長い休暇を取ったのと、秋のインド行きの際、休暇をとるのとで、この夏は休みなしのA男。しかし夏なのだから、海くらいは行きたいものだと思っていた。 昔のメールマガジンで書いたが、わたしたちは、ニュージャージーの南端にあるケープ・メイという古い海辺の町が好きで、何度か訪れたことがある。「海の美しさ」でいえば、それはもうカリブ海などに出かけるのが一番だが、あくまでも近所の海で言えば。 ケープ・メイは、かつて捕鯨と漁業の町として栄えていた一方、アメリカ合衆国が建国される以前から、リゾート地としても知られてきた歴史のある土地。ダウンタウンには、英国統治時代の面影を色濃く残す、パステルカラーも華やかな19世紀ヴィクトリアン・スタイルの家並みが続く。 瀟洒な建物を利用したB&BやInnなどの宿泊施設も多く、そこにはアンティーク家具などが配され、レースひらひらのクッションがあしらわれたりと、ロマンティックな風情が漂っている。ここは町を歩くのも楽しいし、サイクリングなどをするのもいい。洒落たレストランも少なくない。 一方、我々の苦手なビーチ。それは2年前のメールマガジンにも書いているが、ヴァージニア・ビーチに代表される「アミューズメント・パーク化した海辺」である。そのときの文章をちらりと読み返したが、ビーチのレポートにも関わらず、「肥満した人々についての考察。」と題しているあたり、いかなるビーチかが瞬時に偲ばれる。 http://www.museny.com/essay%26diary/mag76.htm やはり数年前、ヴァージニア・ビーチと似たテイストのオーシャン・ビーチというところへ行ったが、季節がまだ浅かったため人が少なかったのがよかった。開拓時代の衣服を着て写真撮影をしたり(江戸村のアメリカ版)、ノロノロのジェットコースター(わたしにとっては、とても速い)に乗ったりして、「古き良きアメリカの海辺」を楽しんだこともあったが、あれはもう、一度で十分だ。 子供連れで楽しく、というのであれば、大賑わいのボードウォークを歩き、甘い綿菓子やソフトクリームを頬張りながら、ピア(桟橋)の遊園地で遊ぶのもいいかもしれない。しかし、大人二人の我々には、どうにもくつろげない。 その週末の4日前、会社にいるA男から「今週の金曜は休みが取れるから、海に行こう。宿の予約をいれておいて!」と無茶な電話が入る。 この時節、アメリカのリゾートはどこもここも込み合い、空いている宿を見つけるなんて一苦労だ。しかも、こんなぎりぎりで。でも、ビーチには行きたい。先日、ルーマニア人の友人カップルが出かけてとてもよかったと教えてくれていた、デラウエア州のリュイス(Lewes)というビーチに行こうと思う。 しかし、電話する宿すべてが満室。9月いっぱいまで週末は全部予約が入っているという宿も少なくない。仕方なく、隣町のレホボス・ビーチに当たってみる。ここも、小さめのビーチリゾートとして、いい評判を聞いていたのだ。 何軒も電話をした挙げ句、ようやく一軒、部屋が空いているところが見つかった。ホームページを見る限り、どう見ても地味で、特筆すべき取り柄のなさそうなB&Bだが、一泊税込みで240ドルもする。マンハッタンのホテル並みの料金設定だ。 夏のオンシーズン、東海岸のちょっとお洒落なビーチにあるB&Bなどは、驚くほど値段を上げる。オフシーズンの2倍はざら。200ドル以上は当たり前で、ケープ・メイなどは300ドル以上の宿も少なくなかったことを思い出した。それで、3年前に出かけたときは、ダウンタウンのはずれにあるホテルに泊まったのだった。 それはともかく、せめて部屋がきれいで快適であることを願いつつ、予約を入れた。あとは天気になることを祈るだけだ。 そして金曜日。雲がかかっているものの、概ね晴。午後早い時間に出発する。大西洋に面したレホボス・ビーチまで、東へ向けて車を走らせる。ワシントンDCの市街を横断し、ニューヨーク・アヴェニューからルート50に乗り換えれば、やがてチェサピーク湾が現れる。 そこに架かるベイブリッジを走り抜けるときの爽快! 広い川や、湾や、海に横たわる橋をスイスイと、滑りゆくのは本当に楽しい。水面が眩い。わたしはアップダウンのある長い橋を走るのがとても好きで、だからニューヨークにいたときも、郊外に出かけるときは、ハドソン川に架かるタッパン・ジー・ブリッジ (Tappan Zee Bridge)を敢えて走るルートを選んでいた。 さて、メリーランド州を過ぎ、デラウエア州に入るころから、あたりは一面、トウモロコシ畑に変わった。時折、ヴィクトリア調の家並みがぽつぽつと見られる小さな町が現れる。 小さなドライブインでガソリンをいれ、普段は買わないチョコレートビスケットでサンドされたアイスクリーム(ハーシー製)を食べたりする。そういう物が、妙においしく感じるから不思議。 わずか120マイルだというのに、ゆっくりと走る道が多くて、3時間以上もかかってしまった。夕方になってようやく宿に到着。チェックインをして、さっそく出かけることにした。 ダウンタウンの海辺は人が多いので、町はずれの、国立公園内の海へ行った。帰り支度をする人々と擦れ違うように、わたしたちは海に出る。夏はまだ日が長い。こんな時刻こそ、海辺が気持ちいいのだ。 しばらくは、砂浜に横たわって、潮の香りのする風に吹かれながら、波の音を聞いていた。最近のA男は、仕事上、頭を悩ませることが多く、日常から脱出したい気持ちが満ち満ちていたので、少し離れたここにきて、急に気が抜けた様子。いきなり海辺で熟睡してしまった。 しばらくして後、起きあがったかと思えば、透明度が非常に低く、かつ冷たい海へ向かって走り出し、泳ぎつつも、なぜかじわじわとビキニ姿のガールズたちに近寄っていき、ニコニコと笑顔で何やら世間話をしている様子。これだもの。 風が肌寒くなってきたころ、二人で波打ち際を歩く。あたりの砂は柔らかく滑らかで、踏みしめると不思議な感触がする。遠い岩場まで歩く。岩にムール貝の赤ちゃんがびっしりとくっついていて、その様はかなり気持ちが悪い。しばらくはムール貝、食べたくないな、と思う。 ちなみに前述のチェサピーク湾は、カニの漁場として有名で(今までに何度か書いた気がするが)、この界隈のシーフードの代表格はカニ肉で作られた「クラブケーキ」や、殻ごと食べられるソフトシェルクラブ、である。 さて、夜は賑やかな街に出て、シーフード専門店に入り、ソフトシェルクラブやロブスターを食べた。しかし、入念なリサーチを怠り、さりげなく入ったことが災いした。素朴な調理法のはずなのに、なぜ? 出される料理がいちいち、おいしくなくて、二人とも無口になる。 「海辺のシーフードレストランはおいしいに違いない」という誤った先入観が間違いのもと。そもそも、ビーチ沿いに一軒あった寿司屋に、うっかり入りそうになったところからして、危なかった。店の主人が目の前の海で釣った魚を出す、っていうのなら話しも別だけど。違うもの。 二日目以降は、この失敗を教訓に「妥協せず」の信条でもって、一生懸命「美味しい店」目指すことになる。 アメリカの郊外では、油断すると、どんなものを食べさせられるかわからない。「まさか」ってなものを出されるからね。気を付けないと。 食後は、店が連なる賑やかなダウンタウンを歩く。アイスクリームやチョコレートの甘い香りが漂っていて、ついつい雰囲気に流されて、Ben & Jerry'sのドアを開ける。そうして、普段なら決して食べたりはしない、バナナスプリットなどを買ってしまう。 アメリカのバナナスプリット。そのボリュームは満点を更に上回って満点。バナナを両脇に添えた、たっぷり三種類のアイスクリームに、チョコレートソース、カラメルソースがどろどろたっぷり。その上に、スプレーでシュウーッと絞り出すあの生クリームが、「これでもか!」というくらいたっぷり。二人で分けても食べきれず。 いや、食べちゃいけない。 賑やかな通りを離れ、人気の少なくなったボードウォークを歩く。束の間の静かな海を楽しみながら、夜が更けていく。
●安宿風情の高い宿。素朴で静かな港町リュイス せっかくの旅に水を差すようなことを考えたくなかったが、どう考えても、宿が割に合わない。快適ならば値段が高くても納得がいくけれど、部屋は古くて安普請だし、掃除は行き届いてないし、朝ご飯まずいし。「ぼったくり」という言葉が、何度も浮かんでは消え、浮かんでは消え……。 シャワールームは(もちろんバスタブなし)狭くて、身体を洗っている間にも、腕がガンガン壁に当たるし。もう、痛いっつ〜に! 狭いっつ〜に! 更には、シャワールームのちょうど目線の高さにシャンプーとか石鹸を置く棚があるのだが、狭さ故、あまりに至近距離過ぎて、シャンプーだかコンディショナーだか、ラベルが読みとれない始末。おのずと老眼状態。 しかし、ネガティブなことを口にすると、せっかくの滞在が不快になるので、そんなことは決して口にせず、できるだけ「よいところ」を無理して褒めつつ、過ごしたのだった。ほんと無理した。 で、宿に関して何がよかったかといえば、ううむ。別にないんだな、これが。朝食のコーヒーがおいしかったことくらいか。 サロンに大きなオウムがいて、これはよかった。ロリータちゃんって名前なんだけど、「ロリータ!」って呼ぶと、「ロリータ!」と返事をしてくれる。それがおかしくて笑うと、その笑い声をまねして、むちゃくちゃ大声で笑うのだ。「ホ〜ッホッホッホッホッ!」と女性の声で。 それを聞いて、こっちもおかしくて笑うと、ロリータも負けじと、ひときわ大きい声で笑う。もう、「ホ〜ッホッホッホッホッ!」があたりに満ちあふれて、ロリータ、笑い袋状態。 しかし男子の声には反応せず。A男はロリータをやたらと気に入り、「もう、行くよ!」って言っているわたしの声を無視して、いつまでも「ロリータ! ロリータ!」って声をかけるんだけど、無視されていた。 笑いのない家庭は、すでに笑い声を習得済みのオウムを購入するとよかろう、と思った。笑う門には福来たる、って言いますしね。 さて、2日目の朝、海辺へ出かけ、持参のパラソルを広げたら(昔、ヴァージニア・ビーチのホテルで買った、ちょっとヤワなパラソル)、強風に煽られて、クルクル砂浜を飛びはねながら、海に飛んで行ってしまった! A男が大慌てで海の中に入って取り戻したものの、傘の骨が折れて惨憺たる状態。あまりの情けない姿に脱力を伴う大笑い。A男はそれでも、「今日は曇りだから大丈夫」と、海辺にゴロリと横たわる。 わたしは海辺の駐車場に停めていた車に戻り、ドアを全開にして、シートをリクライニングにし、ダッシュボードに足を投げ出し(アメリカンスタイル)、かすかに波音を聞きつつ、車内で読書。たとえ曇天でも紫外線は鋭いの。 午前中を海辺で過ごしたあと、車で隣町のリュイスへ行った。ここは、行ってみて初めて知ったのだが、米国の「最初の州の、最初の町」であるらしい。1631年にオランダ人が入植したという、米国で最も古い町なのだとか。 実は、この町の埠頭からは、ケープ・メイへゆくフェリーが出ている。カーフェリーもあり、片道20分で行けるのだ。今回は行かなかったけれど。 リュイスはとても小さく、のどかで味わいのある町だった。レホボス・ビーチのように賑やかではなく、小さなカフェやレストラン、アンティークショップや趣味のいい雑貨店などが、ぽつぽつ、とある。 小さなビストロに入り、ガスパッチョと、クラブケーキのサンドイッチを食べた。おいしかった。夕べのことがあるだけに、安堵した。 食後、パズルの専門店で、しばらく過ごした。いくつもの「智恵の輪」に悪戦苦闘したり、寄せ木のパズルを組み立てたり。長い時間、遊んだので、そのまま店を出るのも気が引けて、ジグソーパズルを、一つ買った。 店の主人は、退職後、自分の趣味であるパズルの店を開いたのだという。いかにも、「好きでやっている店」という温かな雰囲気が漂っていた。 その後、またしてもアイスクリームを買って、桟橋で食べた。桟橋にはクルーザーが停泊していて、カモメがヒラヒラ舞っている。のどかだ。 それからカフェのある本屋へ行き、コーヒーを飲みながら読書。本屋とカフェ、というのは、本当にいい組み合わせだと思う。何かしら、気持ちが落ちつく。 しばらくカフェで過ごしたあと、店を出たら、急に空がかき曇ってきた。天気予報では、この週末「雷を伴う嵐」とのことだったから、いつ来るか、と思っていたのだ。ついに来たらしい。突然に、雷鳴がとどろき、大粒の雨! 「うわ〜!」「うひゃ〜!」と叫びながら、車まで走る。 息を切らしながらタオルで身体を拭き、呼吸を整えて、エンジンをかける。 遠くどこまでも続くトウモロコシ畑の中。そこに真っ直ぐに伸びる一本の道を走ってゆく。大粒の雨に打たれて、囂々と音に包まれて、車の中は、まるで隔絶された空間。最速のワイパーが左右にびゅんびゅんと振れながら、雨を弾く。それと対峙するように、むしろ鎮まる心。 車も、世界も、激しい雨に洗われて、すっかりきれいになっていくさまを眺めながら、ゆっくりと車を走らせる。こういう夕立のような小さな嵐は、むしろ優しげだな、とも思う。 夕食は、A男の熱心なリサーチの結果、評判の高いフレンチビストロに決定。赤ワインを飲みながら、ほうれん草のサラダを食べ、あえてシーフードを回避して、ビーフの料理を選ぶ。とてもおいしく、満ち足りた気分で、やはりせっかくの休日だもの、おいしいものを食することは大切。と思う。 夜はレホボス・ビーチから南下し、海辺の道を走る。車を止め、人気のない砂浜を散歩する。灯台の光。船の光。そしてかすかな月星の光。夜の海はまた、波音が迫ってきて、深い。海と空の境目のない、茫洋とした様子や、白い泡を立てながら、足許に迫ってくる波の動きも興味深く。 こうして、毎日見ていないものを見に来る、というのは、いいものだ。特に、遥か遠くを見晴るかす場所などは。
●森の中の芸術家たち。桟橋と青空とライムネード…… そして快晴の翌朝。やっぱり、青空は気持ちがいい。朝食をすませ、宿の近くの森へ散歩へ出かける。A男はサイクリングに出かけたいと行ったが、わたしは森を歩きたいと主張した。 宿の近くの、静かな木立で、アート・クラフトのイベントが行われていた。地元のアーティストらの作品が、あちらこちらに、展示されている。楽団の奏でる南の国のメロディー。のどかな夏の日。 露店で絞りたてのライムジュース(ライムネード)を買って、飲みながらそぞろ歩く。さまざまな作風の絵を眺めながら、森のはずれまで歩いたところに、小さな運河があった。そこには波止場があり、幾艘ものクルーザーが係留されている。 水辺に伸びる桟橋の、一番遠いところまで歩く。その板張りの桟橋にゴロリと横たわり、天を仰ぐ。麦藁帽子の隙間から、水玉模様の空がのぞく。太陽の熱がじりじりと全身に降り注ぎ、しかし水面を渡る風が身体を掠めてゆき、何とも言えず心地よい。 時折、ボートの音が聞こえてくる。起きあがって、手を振る。 もう一泊くらいはしたいね。と後ろ髪を引かれる思いで、森を後にする。 ランチを食べてから帰ろうと、再びリュイスまで車を飛ばす。パステルグリーンの外観がひときわ目を引く、ヴィクトリア建築のエレガントな店。ブランチメニューには、シャンパンとフルーツが付いている。グラスの底からゆらゆらと泡。光を透かして、ことのほか、美しい。 またもやクラブケーキ、そしてヒラメのグリルを食べた。もう、このままハンモックにでも揺られてまどろみたい、そんな和やかな午後。A男はシャンパンの一口目で「ぼくは運転できないよ」と先手を打つ。これだもの。 帰る前に、もう一度ビーチへ寄りたいと、未練がましくA男が言う。月曜の朝の為に早く帰宅したいと言ったのは彼であり、わたしには、別に急いで帰る理由はない。 水着には着替えずに、ただ、裸足で砂浜を、しばらく歩いた。また近いうちに、秋になったら来よう、そのときは、サイクリングをしよう、それから、船でケープ・メイまで行ってみよう、と話しながら。 シャンパンでほろ酔いのA男は、車に乗るなり、すぐに眠ってしまった。午後の日差しが差し込む車内で、わたしもついつい眠くなり、頬を打ちつつ運転をする。途中のファーマーズマーケットで野菜や果物を買った。トウモロコシやメロン、ピーチ、ズッキーニなど。地元の畑で穫れた新鮮なものばかり。 また、ベイブリッジを渡って、DCに戻る。水面がキラキラキラキラ、とてもきれいだった。 ------------------------------- 翌日と翌々日は、リュイスで買ってきていたジグソーパズルに没頭してしまった。ワシントンDCのイラスト地図が描かれた1000ピースのパズル。専用のフエルトシートまで買っているあたり、抜かりがない。 あまりに熱中して、他のことに手が付かず、もうパズルはこれが最初で最後だ。と言ってる先からインターネットで検索したら、同じ地図のシリーズがあるのを見つけた。うっかりニューヨークとかボストンとか、キーウエストとかケープ・メイのパズルを買ってしまいそうでいけない! ------------------------------- 秋になったら、また行きたい。と思っていたが、実は今週末、米国はレイバーデー(労働者の日)の三連休。新学期直前の、夏の終わりの連休なのだ。 「もう一度、海に行きたい……」とA男が主張するので、だめでもともとと、昨日リュイスの宿を当たってみたら、一軒、部屋が空いていた! しかも、前回よりは多分、かなりクオリティが高い上に、値段は安め! ちなみに1泊280ドルとか320ドルとかのスイートルームなら、他の宿も空いていたが、それは空いているうちにはいらない! 別のところに出かければ? と言う気がしないでもないが、何となく、二人とも、あの地味な海辺の町が気に入ってしまったのだ。迷いなく、予約をいれた。 というわけで、今週末は、「この夏最後の海辺」に行って参ります。みなさまも、よい残暑をお過ごしください。 ●リュイス・ビーチのウィブサイト http://www.leweschamber.com/ ●レホボス・ビーチのウィブサイト http://www.rehoboth.com/ ●ケープ・メイのウィブサイト http://www.capemay.com/ (8/31/2004) Copyright: Miho Sakata Malhan |