ホテルに戻り、部屋を移る。ジュニアスイートは、ジュニアとはいえ十分に広く、前の部屋よりも格段に居心地がいい。バスルームも広く快適で使い勝手がいい。とてもリラックスできる雰囲気が保たれている。 「気持ちいいベッド〜」 と言いながら、ゴロリとベッドに横たわった次の瞬間からもう寝息を立てている夫。わたしは部屋着(短パンTシャツ)に着替えて、またしても持参のワインを飲みながら、写真を整理したり、旅の記録を綴ったりする。それにしても、デジタルカメラやインターネットというのは、本当に便利なものである。 旅をしている最中に、旅のレポートを綴り、それをライヴで公表できるなんて、わたしが社会人になったばかりのころ、旅のガイドブックを作っていた時代には考えられなかったことだ。今だって印刷物を作るには然るべき時間がかかるけれど、作業の形態は大幅に変わった。 ただ、以前もどこかで書いたけれど、デジタルカメラは気軽に持ち運びができて何枚でも取り直しがきく分、被写体に対する集中力が浅くなる。 風景1枚1枚に対する姿勢は、一眼レフのマニュアルカメラで撮影していたときの方が、ずっと鋭かったように思う。そう考えるとまた、一眼レフのカメラが欲しくなるが、しかし現在使用しているSONYのサイバーショットが、とても使いやすいので、これで十分だとも思ってしまう。 さて、夕暮れ時になって夫が目を覚ました。庭を散歩しようと夫が言う。昨日見たうさぎやタヌキをわたしにも見せたいというのだ。ロッジの裏手にある階段を上り、丘の上の見晴らしのいい場所にゆく。 木陰でかさかさ、と音がするので見れば、ほんとだ、うさぎがいる。けれどわたしたちに気付くや、すぐに遠くへ逃げてしまった。わたしたちはしばらくベンチに腰掛けて、赤い岩々を眺める。それぞれの岩に、名前がある。それを説明するサインを見ながら、実際の岩山と見比べ、名前を確認する。 やがて現れた小ウサギを眺めたり、タヌキに出くわしたりしながら、平穏な庭を歩く。夫はそのあとプールで泳ぎ、わたしは再び部屋に戻った。 夕食は今夜もまた、テラスで取る予定だった。ところが夜になって夫が 「今日はNBAのファイナルを絶対見なきゃならないから、急がなきゃ!」 と言い始めた。 「せっかく雰囲気のいい場所なんだから、わたしはゆっくり食事をしたいんだけど。急ぐのなんて、やだからね。こんなところに来てまでバスケットボールなんて、いいじゃん、もう」 「ミホはバスケットボールやってたくせに、どうして興味がないわけ? 見たくないの? ぼくは絶対見逃したくないからね。ああ、どうしよう」 「じゃ、ルームサーヴィスを頼む? でもせっかくのおいしい料理だから、冷めたりするとやだよね」 「ううう。どうしようか」 そんなに悩むことでもあるまい。もう。気もそぞろで食事されるよりは、少々お行儀が悪くても、部屋でTVディナーの方がいいかもしれぬ。ここは快適な部屋だし。ということで、出前、いやルームサーヴィスを頼むことにした。 チャレンジャーなことに、パスタを注文したが、シーフードのだしがパスタにしみ込んでいて、決して「アルデンテ」ではなかったが、非常に美味。また、ステーキサンドイッチも柔らかなビーフが極めておいしかった。バスケットボール観戦に熱中しながらも、十分に堪能できた夕食だった。いや、わたしはバスケットボールではなく料理に熱中していたのだが。 さて、夜になり、寝る前に電子メールをチェックしたところ、友人からメールが届いていた。その中の一文に目がとまった。なんでも、セドナには地球の「気」が吹き出るヴォルテックスとかいうスポットあるらしい。彼女はここに来たことがあるらしいが、「よくわからなかった」らしい。で、「レポート希望!」とある。 なになになに? その「気」が吹き出るスポットって。そういうのって、ものすご〜く、関心があるんじゃなかったのか、わたしは。そんな大事なことを見逃して立ち去っていいのか? 慌ててミシュランのグリーンガイドを開く。 "In the 1980s, these
sites and others were identified as "vortices", where
concentrated electromagnetic energy emanates from the earth.
Native Amerians had long imputed inspirational
characteristic to these sites. Sedona's red rocks have now
become a becon for the New Age, attracting hosts of visitors
seeking spiritual enlightment." なんてこったい。セドナには、地球からの電磁波がじゃんじゃか放出しているヴォルテックスというポイントが点在しているらしい。でもって、この界隈は、スピリチャルな世界に心を寄せるニューエイジ系の人々の、いわばメッカのような場所でもあるらしい。悟りの境地を求めて、ここまでやってくるらしい。 更には日本語のサイトでも検索してみるに、多くの人が「ヴォルテックス」目指してセドナまでやって来ているらしきことが発覚。日本で言うところの四国とか熊野といった「霊場」的な位置付けらしい。おおう。そんなたいそうな場所だったのかここは。 「部屋でのんびり〜」もいいけれど、このまま立ち去るのも惜しいではないか。夫はすでにテレビを見終え、ベッドで就寝中だったが、わたしはフロントデスクまで行き、ヴォルテックスのポイントについて尋ねる。いくつかのポイントがあるらしいが、ここから2マイルほどの空港の近くに強いポイントがあるという。明日、帰りにでも立ち寄ってみようと思う。 [DAY
10-11/ Miles Driven: 92 (2872)]
JUNE 23, 2005/ DAY
11
SEDONA (ARIZONA)
居心地のいい部屋で過ごす午後。そして深夜に知る「ヴォルテックス」の存在
夕方になって、敷地内を散策。 夫が気に入ったというヒルサイドへ。
小ウサギがやってきた。人間にもおびえず、ぴょんぴょんしている。硬直して見守る夫。
かわいい……。 さて、この右側の岩の名前は何でしょう。何者かが横たわっている図とよく似ています。
*岩の名前:スヌーピー・ロック。スヌーピーが寝転んでいるみたいでしょ。
最初は夫が冗談を言っているのかと思っていたが、本当にそう呼ばれていた。