SCENE 07: 安全地帯で過ごす午後
MUMBAI (BOMBAY), OCTOBER 27, 2004

今日はもう、街を歩かない。観光はもういい。ショッピングも必要ない。
ノートブックのコンピュータや本、ノートなどを鞄に詰め込み、タクシーに乗る。
そうして、タージ・マハル・ホテルへ向かう。
ここのラウンジで、午後のひとときを過ごそうと思う。

窓の外にはインド門。行き交う観光客。
ピアノの演奏が心地よい、涼しく軽く、清澄な空気に満たされた場所で、
まるで隔離されているみたいに安全な場所で、ひとときを過ごす。


10月27日(水)

■タージ・マハル・ホテルに直行。静かに過ごす数時間

街歩きはもう、昨日で十分だ。特に観光したいところがあるわけではない。買い物も特に目的があるわけではない。今日は旅日記でも書いて静かに過ごそう。そう思い、iBookやノートなどをバッグに詰め込み、タクシーに乗る。

タージ・マハル・ホテルには、この半年のうちに、新しいレストラン「ワサビ」と「ルイヴィトン」がオープンしていた。ルイヴィトンはかなり広いスペースで、心地のよい皮革の匂いが漂っている。そこにはもう、インド独特の匂いはない。欧米の匂いだ。

テラスでランチを食べたあと、ラウンジへ行く。前回訪れたときに顔見知りとなっていたウエイターがいた。なんとなく気持ちがほころぶ。

窓の外にはインド門。相変わらずの風船売りがいて、相変わらずの観光馬車が走る。門の周囲にはひっきりなしに訪れる観光客と、日がな一日、海を眺めながらぼんやり過ごす男たちの姿。汚れた海に飛び込む少年ら。エレファンタ島へゆく観光船がゆっくりと水面を滑る。

じわじわと日が翳ってゆくのを、時折、見やりながら、黙々と綴る。

瞬く間に、紅茶が冷めてゆく。

やがて4時を過ぎたころ、ラウンジの一画でハイティーの準備が始まった。野菜などのフリッター(揚げ物)やサンドイッチ、ケーキやムースなどのデザート類が美しく並ぶ。夕食前の軽食を楽しむ人々がちらほら。なんともいえず、優雅である。しかし、この時間にかようなものを食し、更に夕食を食べた日には、カロリー摂取過多というものである。

←プールサイドのテラスでランチ。チキンティッカのピタブレッドサンドイッチ。


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