SCENE 26:
ハデハデ・デブデブ・パラダイス
CHENNAI (MADRAS),
APRIL 25, 2004
サリーを買いたいんだけど、どこかおすすめのお店はありますか?
ホテルの女性スタッフにそう尋ねた。彼女は一枚の紙切れに行き先と店名を書き、私にくれた。
オートリクショーのドライバーにそれをを示し、連れていってもらう。
そこは、色と熱気に満ちあふれていた。
台の上に、次々にサリーを広げる人。手に取り、触り、眺め、吟味する客。
そして次々に、畳む人。棚に収める人。お客を案内する人。レジで計算する人。
人々の交わす言葉が建物中に渦巻いて、平日だというのに驚くほどの賑わいだ。。
そして何故か肥満した目に付く独特の空間。
圧倒されつつ、気圧されつつも、目を凝らし、棚を眺め、わたしもまた品定め。
何着かを身体に巻き付けてもらっての試着。これもすてき。あれもすてき。ああどうしよう。
またしても、2枚、買ってしまった。
4月25日(日)
■そして、バンガロールを離れ、ベンガル湾を望む東の都市、チェンナイ(マドラス)へ。
夕方、まだ日の高いうちにチェンナイに着いた。この街ではTAJ
CONNEMARAというホテルで過ごす。街の中心地で、隣にはショッピングモールもあり便利そうなところだ。
しかしバンガロールに比べると、かなり蒸し暑い。その上、街全体が非常に汚く、古く、人々もけだるそうな表情をしている。
ホテルにチェックインした後、中庭のプールでひと泳ぎする。部屋の目の前にプールがあるのが便利でとてもいい。しばらく泳いだら暑さも和らぎ、ずいぶんと気分がよくなった。
少し散歩をしようと街を歩くが、たちまち喧騒に包まれて疲労感が襲ってくる。しばしショッピングモールを歩くものの、人混みにも辟易。と言いつつも、インターネットカフェなどに立ち寄りつつ(ホテルのビジネスセンターはとても高い)、しばらくをそこで過ごす。
ホテルのレストランでインド料理のブッフェディナーを食べ、部屋に戻る。夫がTAJグループのカタログをパラパラとめくっているときに、チェンナイに同じTAJホテルの系列で、フィッシャーマンズ・コーヴ(FISHERMAN'S
COVE)というリゾートがあるのを発見した。ここから車で40分程度。海を望む、雰囲気のよさそうなリゾートホテルだ。料金もこことあまり変わらない。
「ねえ、美穂、このフィッシャーマンズ・コーヴに行かない?!」
わたしは構わないけれど、あなたの仕事は大丈夫? 彼曰く、明日は夕方まで打ち合わせだけれど、明後日は丸一日休めるという。もちろん資料をまとめたりの仕事はあるけれど、それは部屋でできるし、明後日の打ち合わせは、空港の近くのオフィスビルだから、ニューデリーに発つ直前に行けばいい、とのこと。
わたしも、この埃っぽい町中で3泊を過ごすより、海辺のほうがよほどいい。
早速、フロントに電話をして交渉する。予約でいっぱいだと言われたけれど、ともかくウエイティングリストに載せてもらい、明日の朝、返事をもらうことにした。
4月26日(月)
■またしても、サリーを求めて街へ出る
夫は朝からブレックファスト・ミーティング。従ってフィッシャーマンズ・コーヴに関するやりとりはわたしの責任に。朝から何度となくフロントやらマネージャーやらと交渉し、このホテルのキャンセル料を支払うことなく、フィッシャーマンズ・コーヴに泊まれることとなった!
わたしは早々にチェックアウトの準備だけをして、昼間は出かけることに。ホテルの移動は夫が仕事を終える5時半を過ぎてからだ。
さて。一言で「サリー」と言っても、地域によってその素材やデザインはたいへん異なる。この街でも、ぜひともサリーを見ておきたい(買っておきたい)ものだ。ホテルのフロントの女性にお勧めのサリー店を教えてもらい、オートリクショーで街を行く。それにしても埃っぽいし蒸し暑いしで、バンガロールが恋しい。
Sナガールと呼ばれるそのエリアには、サリーの大型店が林立していて、各種商店も立ち並ぶ繁華街。いくつかのサリー店をのぞいてみたが、ホテルの女性が勧めてくれた店だけは、格段に込み合う「人気店」だった。各階ごとに、「結婚式用」「木綿素材」「絹素材」と、大まかに分かれていて、全体を見て回るだけでもかなり時間がかかる。
結局、またしても、すてきなサリーを続々発見。もう、どうしよう。いつ着るんだ。と、自問しながらも、その「お手頃感覚」がまた購入意欲を倍増させる。今後チェンナイに来ることは当分ないんだから、買えるときに買うべし! と自分にいいきかせ(ることもないのだが)、またしても2枚購入。これがまたすてきなサリーで、本当に見惚れる。
この国の、テキスタイルの文化の深さ広さに、心底、感嘆させられる。
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