ムンバイの、あちこちで見かけた風船売り。 「その大きな風船、何に使うの?」 膨らましているうちに、貧血を起こしそうだ。 なぜ、こんなにも需要の低そうなものを、大勢の人々が競うように売っているのか、どうしても理解できないので、ホテルのスタッフに尋ねてみた。 「ねえ、どうしてあんなに大勢の人が、風船を売っているの? あれは、売れているの? 商売になっているのかしら?」 「ああ、風船ね。あれはムンバイの特産なんだよ。郊外に工場があってね。インドでも、ここでしか、手に入らないんだよ。あれはグッド・バルーン。いい風船なんだ。買った?」 この国には、わたしには到底理解できない、不思議な「幸福感」があるような気がして、脱力感を伴う、しかし平和な笑いが込み上げてくる。
MUMBAI (BOMBAY),
APRIL 19, 2004
巨大な風船を、平手でバンバン打ちながら、その丈夫さを誇示しながら、風船売り。
しかし、そんな大きな風船をどうする? しかも、みんなして売ってどうする?
「サプライズだよ! サプライズ! バースデーパーティーとかの。いい風船だよ! グッド・バルーン! 1セットで20ルピーだよ! 安いよ! 買わない?」