インドの夏。マンゴーの夏。 数あるマンゴーの中で、最も美味だと評判の「アルフォンソ・マンゴー」は、ムンバイ名物だ。街の露店の至るところで、ほのかに甘い香りを漂わせながら、マンゴーが山と積まれている。 昨日、ホテルの近くの露店でマンゴーを買おうと思った。値段を聞いたら、店の人は言った。 「1ダース、600ルピー」 1個あたり50ルピー。つまり1ドル程度。インドの物価にして、これは高い気がする。 「じゃあ、いらない」と、わたしが言うと、 「ちょっと待って。じゃあいくらなら買うのか?」と、店の人は問う。 なんだかくたびれていて、値段の駆け引きをするパワーがなく、そのまま立ち去る。 通りすがりの別の店で、また値段を聞いた。「3個で300ルピー」と言われた。つまり1個が2ドル程度。観光客だからって、それはふっかけすぎと言うものじゃなかろうか。 それではいったい、マンゴー1個の相場はいくらなのか。ホテルの人に尋ねてみた。彼曰く、 「そうですね。ひとつあたり、20〜30ルピー程度でしょうか」 そして今日。カメラ店に寄った帰り、ムスリムのエリアを歩いていたら、黄金色の見事なマンゴーを積んだ屋台を発見した。 ムスリムの、白い衣装を身につけた男性が二人。 「そのマンゴー、おいくら?」 「80ルピー、XXXXXX(聞き取れなかった)」 「えっ、1個が80ルピー?」 「ノーノー! 1ダース、12個で80ルピーだよ!」 二人は笑いながら答えた。や、やすい……。でも、12個は多すぎるから、半分の6個を買うことにした。 「じゃあ、40ルピーね。このマンゴーは本当においしいよ。また買いにおいで!」 「ありがとう!」 なんだかものすごくうれしくなって、ビニール袋を片手に、足取りが軽くなった。
MUMBAI (BOMBAY),
APRIL 17, 2004
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