●"Shall we dance?" ご一緒に、踊りませんか?

「いつかはきちんと、ダンスを練習しなきゃね」といいながら、機会がないままに来ていた。

午後2時半から、ボールルームでダンスのレッスンが行われる。リズム感が著しく悪い夫が果たして踊れるようになるのか、妻は自分のことは棚に上げて心配ではあった。が、ともかくは、参加することにした。講師はとてもフレンドリーな熟年夫妻だ。

初日はスウィング。男女に分かれて基本的なステップを練習し、それからカップルが手を取り合っての実践。女性はクルクル回らなければならないので目が回る。何度も足を踏みつけたり、踏みつけられたり、本当に大変。なかなか息が合わない。全くの初心者はわたしたちだけだったから、先生も手取り足取り教えてくれて、1時間のうちに、それなりに踊れるようになった。

翌日はルンバ。これは前日のスイングよりも難しかったが、参加していた老夫婦が、やはり一緒に踊って教えてくれて、それなりに踊れるようになった。ちなみにその老夫婦は、中国系フィリピン出身アメリカ人で、この近くで二人ともドクターをしているのだという。

二人は夕食のとき、食事をする暇もないくらい、席を立って踊っていたから、よほどダンスが好きなのだろう。あとから聞いたところによると、二人がダンスをはじめたきっかけは、10年前、夫人が骨盤の大手術をし(現在は人工の骨盤なのだとか)、そのリハビリテーションのためだったという。

「ダンスは健康にもいいし、それからアルツハイマー防止にもいいのよ!」

とても身体が悪かったとは思えない、小柄で丸々太った夫人が笑いながら言う。「ぼくは踊りが苦手だから」という我が夫に、やはり小柄で優しげなご主人は「僕もまったく踊れなかったんだ。でも、そのうち楽しくなってくるよ」と励ましてくれた。

わたしたちも、いつかは「踊り続ける二人(by 『街の灯』)」みたいになれるように、これから少しずつ、練習をすることにした。



先生にマンツーマンで教わり、緊張の極みな夫。


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