●日本人妻もしくは大和撫子

まだ、夫と出会ったばかりのころのこと。街を歩きながら彼は言った。

「僕のおじいちゃんが言ってたんだけどね。世界で一番幸せなことは、アメリカの家に住んで、フランスの料理を食べて、日本人の妻と暮らすことなんだって。で、一番不幸せなことは、日本の家に住んで、フランス人の妻をもらって、アメリカの料理を食べることなんだってさ」

笑いながら聞いてはいたものの、「日本人の妻」ってところがひっかかる。それって「大和撫子」を意識した全世界的なステレオタイプよね。

このあいだ、サンクスギビングデーのパーティーで帰り際、私がさりげなく夫のジャケットを渡してやったら、親戚のおじさんが

「さすが日本の女性は気が利く!」と大げさに褒めてみせた。そういうのって、いちいち反応することもないけど、あんまりうれしくないのよね。その十把ひとからげ感が。第一、私、大和撫子じゃないもの。規格外。

でも、やっぱアメリカ人女性に比べれば、おとなしいものかしら。気が利いてるかしら。

このあいだ、フランス料理を食べながら、夫がニコニコしながら言った。

「僕、おじいちゃんが言ったとおり、アメリカの家に住んで、日本人の妻がいて、フランス料理食べて、ものすごく幸せなシチュエーションだなあ」

シンプルに喜んでる人に水を差すのは悪いから黙ってたけど、やっぱりそれって、うれしくないね。私にとっては……。ミョーに複雑な気持ち。天国のおじいちゃんは、孫の幸せを喜んでくれてるかもしれないけど。(1/7/2002)


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