●絶妙のタイミング

我が家では、家事全般は、わたしの仕事である。この件に関しては、いろいろあった。彼と出会って7年。結婚して2年。最初の頃は、「彼にも家事を!」とムキになった時代もあったっけ。

でもね。もう諦めたの。

結局、自分でやった方が早いし、きれいだし、イライラしないし。

料理に掃除・洗濯は当たり前。大工仕事に電気の配線その他、なんでもかんでもお任せよ! ってなもんだ。

わたしは幸か不幸か、日曜大工系の仕事も嫌いじゃない。つまり、一人で生きていけるタイプなのね。なにしろ独身生活長いから。

自分がどんなに仕事が忙しくても、夫に何かしてもらおうという「期待心」はない。夫にそうじを頼むくらいなら、「お掃除サービス」を頼んだ方がいい。

そんなわたしに世間は言う。

「だめよ、そんなことじゃ。教育しなきゃ、教育」

わかってるって。わたしだって、最初はそう思ってた。しかし、彼はもう、子供じゃないのよ。子供なら、うまく育てりゃ、5年、6年で掃除の手伝いをしてくれるようにもなるだろう。

しかし、大人はね。5年たっても10年たっても、しない人はしないのよ!

食事にしても、わたしが料理の準備をし、食後は食器を洗う。そうそう、いちおう、食器を下げるのは、手伝ってくれるのよ。洗わないけどね。あ、それから彼の面目のために言っておくけれど、
「おいしそう!」
「いただきます!」
「おいしい!」
「ごちそうさま!」
「おいしかった!」
は、完璧に日本語をマスターしてます。必ず言います。

とはいえ、本人は、たまに罪悪感を覚えるらしい。しかし、その罪悪感が、また、半端なんだな。

平日は仕事で疲れているだろうからいいにしても、例えば週末。わたしが食器を洗っている間、彼はごろりとソファーに横になってテレビを見ている。

わたしが食器をほとんど洗い終え、さあ、お茶でも入れようかな……、という段になって、彼は必ず言うのだ。しかも、ちょっと、芝居じみた口調で。

「あ、ミホ! 何か手伝おうか? 洗い物、しなくていい?」

自分さあ。もっと早くそれを言ってよ。いつもいつも、終わった頃に言うのはどういうこと? しかし、その「洗い終わった瞬間」を「今だ!」とばかりに声をかけてくる絶妙のタイミングには、敬服する。

一言、声をかけたことで「一応は家事に協力する姿勢はあるのだ」というところを示すところが、なんとも憎いやつである。

(5/22/2003)


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