●大停電。熱波。かみ合わぬ会話。

8月14日の夕方、ニューヨークでの3泊4日を終えて帰宅したわたしがニューヨークを出た2時間後に、ニューヨークその他広範囲に亘って、大規模な停電に見舞われていた。

状況が気になり、時折ニュースをチェックするわたしに夫が言う。

「ミホ、停電なんて、大したことないよ。インドじゃしょっちゅうだよ。ほら、僕の家の自家発電覚えてる? ミホがうちに来たときも、毎晩のように冷房が切れて、自家発電機が作動してたでしょ。うるさかったけどさ。停電なんて、大したことじゃないんだから、そんなに心配することじゃないよ」

こういうと語弊があるが、インフラが整っていない途上国のインドと、一応は先進国のアメリカをいっしょにしないでよ! ニューヨークとニューデリー、響きは似ているけど、全然違うんだから。という言葉が喉まで出かかるが、迂闊に夫の祖国を侮辱すると、とんだ論争に発展するので、黙って画面を見つめる。

更に夫は、新聞を読みながら言う。

「フランスじゃ、暑くて3000人も死んだんだってよ。フランス人はヤワだねえ……。インドじゃ摂氏40度を超えるくらい、当たり前なんだけどなあ」

だから、もともとから猛烈に蒸し暑いインドと、そうでないフランスを比べてどうする。そもそもインドでだって、何年かに一度は熱波だのなんだので、大量の死者が出てるではないか。

9/11のテロの時もそうだったが、事件に対する精神的なポジションが、夫とわたしは根本的に異なるため、しばしば話がかみあわない。

この手の出来事が起こるたび、さも「達観した態度」を取られるため、妙に癪に障る。まあ、好きなことを言わせておけばいいのだが。

それにしても、大停電の原因が解明されるにつれ、アメリカもインド並みの途上国であるなあということを、再認識する昨今。

(8/18/2003)


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