April 30th., 2003 "W" な、夜。

ウォルドルフ=アストリアのバーもいいけれど、
格式のあるホテル・バーは、しっとりとした年輩のゲストがよく似合う。
夫のリクエストで、ウォルドルフの隣にある、クールなブティックホテル
「W」のバーで飲むことにした。

普段は甘いお酒をあまり飲まないのだが、
今日は勧められたカクテルを、素直に試してみることにした。
わたしはレモンフレイバーのマティーニを、夫はアップルフレイバーのマティーニを。
どちらのカクテルも、バブル・ガムみたいな、かわいい味がした。

 April 29th., 2003 ウォルドルフ=アストリアの桜

夫の出張に便乗して、1カ月ぶりのマンハッタン。
ウォルドルフ=アストリアに泊まると聞けば、同行せずにはいられない。
ここにはウォルドルフ=タワーというVIP専用の館があり
豪華なスイートルームが用意されている。
無論、わたしたちは「一般客向け」のゲストルームだけれど……。

エントランスとロビーを結ぶ回廊に、いつもこのホテルは豪奢な花を飾っている。
今日は、見上げるほどの満開の八重桜が、出迎えてくれた。

 

 April 28th., 2003 最後のクラス

わずか1カ月弱だったけれど、
平日の朝9時から午後1時までの4時間を一緒に過ごしたクラスメートたち。
コロンビア、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、メキシコ……。
ラテンの国から来た、楽しくて、元気いっぱいの若者たち。

久しぶりの勉強は頭が痛かったけれど、「英語に対する姿勢」を見直すいい機会だった。
集中コースは今日で終わり。来月からは週2回のクラスに切り替える。
また、新しい出会いがあるだろう。

  

 April 27th., 2003 幸せピクニック

すばらしい晴れ具合だったので、日曜だというのに、朝早く目覚めた。
ご飯を炊いて、おむすびを作り、さあ、国立樹木園へ出かけよう。

広大な緑の草原の、大きな木の下のベンチで、お弁当を広げる。

目に映る風景、肌で感じる風、耳に届く鳥のさえずり、鼻に届く新緑の匂い、
口に入るおむすびの味、すべてが、すばらしく、心地よい。

お腹がいっぱいになったあとは、草の上にごろりと寝転がって、まどろむ。

 

 April 26th., 2003 インドのデザート、グラブジャムンを作る。

たっぷりのパウダーミルク、少しの小麦粉、バターひとかけ、ベーキングパウダー少々。
それらを、軽めの生クリーム、もしくは牛乳を少しずつ加えながら、捏ねる。
耳朶くらいの堅さまで。そう、白玉だんごを作るときと似た感じで。
油で揚げ、ふんわりこんがりきつね色になったところですくい上げ、
カルダモンやグローブの実を入れた、シロップに浸す。
ポットに入れて、冷蔵庫で寝かせておき、食べたいときに温め直して食べる。
「グラブジャムンは甘すぎるから、日本じゃはやらない。だからメニューにないんです」
去年の夏、パーティーの会場に使った六本木のインド料理店の、インド人店主は言った。
でも、家で作るときは、シロップの砂糖を少なめにすれば大丈夫。
ほどよい甘みと、ミルキーな味わいが、とてもやさしいデザートの出来上がり。

 

 April 25th., 2003 パステルカラー

とあるホテルの前庭の、植え込みの色が、目を奪う。

無造作に植えられた、蝶のような顔をしたパンジーの、
紫や黄色や白やクリーム色が、
まろやかに溶け合って、パステルカラーとなり、バランスよくそこにある。
なんだかおいしそうでさえある。

わたしは鮮烈な色が好きだけれど、こんなやさしい色もまた、いいものだ。

 

 April 24th., 2003 穏やかな春日の朝の、つつじ賑やかに開きて、静かに翻る星条旗よ

この時節、ことに天気のいい日、毎朝、外に出て歩くことの気分よさ。
ツツジの植え込みがあちこちで花をさかせ、しんとした小道を鮮やかに彩る。
空は青く、まだ吹く風が少しひんやりとしているのがいい。

木の枝に吊された星条旗を見て、この国の戦いのことなど思い、我に返る。

そしてさらには、
ここはワシントンDCで、ブッシュの住んでいる街だということを、思う。

 

 April 23rd., 2003 絵に描いたような……

子供の頃、初めて描いた花は、多分チューリップで、
多分、こんな形をしていたと思う。

初めてオルガンで弾いた曲も、そういえばチューリップだった。

咲いた咲いたチューリップの花が
並んだ並んだ赤白黄色……。
……本当に、「どの花を見ても、きれいだな」と思う。

 

 April 22nd., 2003 東向きの窓から

ほとんどの窓が東に向いているので、
部屋に朝日がさんさんと射し込んでくる。

特に天気のいい朝は、小鳥のさえずりと、緑の匂いが、部屋の中まで届く。

花瓶に生けた花でさえ、瑞々しい力をたたえながら、
光に向かって開花する。

春の朝は、格別に、命がみなぎる。

 

 April 21st., 2003 フランスからの贈り物

わたしも夫も、甘い物が大好き。でも、普段はあまり食べない。
なぜなら二人とも、みるみる太りやすい体質だから。
今日はゲストが訪れるので、語学学校の帰り道、スーパーマーケットでお菓子を探した。
まるで食パンでも入っていそうな簡素な袋。
だけどチャーミングに見えたのはフランス語のせい?
パッケージの上からそっと押さえてみる……ふむ。意外にもふんわりしている。おいしそうだ。夫の祖国で買い求めた、極上のダージリンティーとともに、テーブルに出す。
卵と、バターと、レモンの香りがまろやかに混ざり合った、なんて、優しい味のマドレーヌ。
少しも気取ったところのない、けれど、だから、とてもおいしいマドレーヌ。

 

 April 20th., 2003 愛着とか、思い入れ、など。

普段の食卓で楽しむワインは、近所のスーパーマーケットで手に入る10ドル前後のワイン。
カリフォルニアの、ナパやソノマ産のカベルネ・ソーヴィニョンを選ぶことが多い。
中でもベリンジャーのこのワインは、
しっとりと落ち着いていて、でも重すぎず、ほんのり甘く、お気に入りの一本だ。
かつて取材でナパのワイナリーを巡った。
一番気に入ったのは、1876年、ドイツからの入植者ベリンジャー兄弟によって創業された
ナパ最古のベリンジャー・ヴィンヤーズだった。
そんなこともあり、ワイナリーへの愛着や思い入れも、味覚に影響していると思う。

 

 April 19th., 2003 ムーミンたちが住んでいそうな場所。

夕暮れの、白く刺すような日差しが緑に降り注ぐとき。
それまで無口だった植物たちが、途端に生き生きと語りだす。

しゃがみ込んで、光が透き通っている部分を眺めていると、
いつしか耳鳴りがし始めて、
小さな小さな世界に引き込まれていく。

こんな光と植物のある場所は、スナフキンがよく似合う。

 

 April 18th., 2003 おいしいものを、大切に食べよう。

「FAT FREE」とか「LOW FAT」とか。
いつしか言葉に惑わされて、おいしくもないヨーグルトを食べ続けていた。
この間、フランスやスイスを旅して、ヨーグルトのおいしさを再認識した。
ミルクの味わいがギューッと凝縮された、質のいいヨーグルトを適量食べる方が、
風味も味覚も浅いヨーグルトを大量に食べるよりも、ずっといい。

今、お気に入りのヨーグルトを探している途中。
アメリカのプレーンヨーグルトには、なぜか表面にクリームが載っている。
しっかり混ぜれば、とろりと滑らか。バナナやベリー類によく合って、おいしい。

 

 April 17th., 2003 気分転換のおみやげに。

「仕事に煮詰まったときは、オフィスを離れて外を歩いて、気分転換をしたら?」
晴れた春の日の午後、妻の助言に従って、オフィスビルの界隈を散策した夫。

ウイリアムズ・ソノマで見つけたという「マルガリータ・ミックス」を買ってきた。
帰ってくるなり、まっさきに、包みから取り出して「ほら!」と誇らしげに見せる。

週末、テキーラを買ってきて、これでマルガリータを作ろう。
とびきりおいしいマルガリータを。

 

 April 16th., 2003 かわいい!

取材のために、ジョージタウンを歩いた。
小さな子供服の店を見つけた。

色とりどりの、小さな服。
とてもおしゃれで、カラフルで。

靴もまた、思わず「かわいい!」と口にしてしまうものばかり。
花のアップリケがついたこの靴は、フランス製だった。

 

 April 15th., 2003 まばゆい黄色。

スーパーマーケットで、皮が付いたままの、もぎたてのトウモロコシを見つけた。
見るからに、とても瑞々しいトウモロコシ。そのまま丸ごと、オーブンに入れて焼く。

オーブンから香ばしい匂いが漂ってきたら、アツアツを取り出して、皮をむく。
まぶしいくらいに鮮やかな黄色!
丸ごとを、塩もバターも付けずにそのままがぶりとかじる。

おいしさが、ギューッと凝縮されていて、ただ、黙々と、食べる。

 

 April 14th., 2003 桜餅に憧れる、春の日。

ソメイヨシノが散ったあとは、八重桜の出番。
この風景を布にして、テーブルクロスやベッドカバーを作りたい。

それにしても、芽吹き立ての葉の、なんと柔らかく潤っていることだろう。
みずみずしい葉を見ているうちに、桜餅を思い出した。
桜餅。ほんのりと桜色の、春のお菓子。

濃いめに入れた香りのいい緑茶とともに、おいしい桜餅を食べたいものだ。

 

 April 13th., 2003 爽やかな風を受けながら、ビールを飲む。

日曜の午後。ジョージタウンのピッツェリアで、早めの夕食。
よい天気。
窓際の席に座って、
道行く人を眺めながら。
道行く人に眺められながら。

ほどよく冷えたビールがおいしい。
本当に、おいしい。

 

 April 12th., 2003 天気がいい週末の、光あふれる朝食

目覚めれば青空。窓を開ければ緑の匂いがする爽やかな風。
こんな休日の朝は、いつもより少しだけ時間をかけて朝食をととのえる。

絞り立てのオレンジジュースに、ブルーベリーを載せたヨーグルト。
粉を冷たいミルクで混ぜ合わせ、適当に手で丸めただけの、
不格好なビスケットが今日の主役。

まばゆい朝日が、ガラスの器を通り抜け、テーブルで光が泳ぐ。ゆらゆらと。

 

 April 11th., 2003 散歩

さあ、みなさん!

2列に並んで
お友達と手をつないで
長い紐につかまって
みんなで仲良く、お散歩ですよ。

 

 April 10th., 2003 床と靴の間から、音が生まれる。

カツ、カツ、と、床を踏みならし、小気味よい音を立てながら踊るダンサー。
音の秘密はシューズにあった。

フラメンコシューズの裏には、かかととつま先の部分に、
こうして釘が打ち付けてある。
それも、かなり無造作に。

この釘が、床に当たって、香ばしく、リズムを刻むのだ。

 

 April 9th., 2003 大は小を兼ねない

赤い辞書の上にあるこの二つの物体はなんでしょう?

大きい方はアメリカ製のホッチキスの芯(針)、小さい方は日本製のそれ。
アメリカ製はあまりに大きすぎて硬すぎて、数枚の紙を綴じるのには強すぎる。
紙が傷んでしまう。
だからわたしは、今でも日本から持参した小さいホッチキスを愛用している。
アメリカ製を使うのはごくまれだ。

大は小を兼ねない。

 

 April 8th., 2003 学生の心に戻る日々が始まった

米国暮らしを始めてから、まもなく丸7年。
今更のように、英語学校に通い始めた。
月曜から金曜の朝9時から午後1時まで。
語学留学生向けの「集中コース」を選択した。

久しぶりの、「学生気分」に浮き足だったのは最初の数十分。
あたりまえだが、授業中は気が抜けない。
帰宅してからも、宿題に手間取って、夜が更ける。先が思いやられる。どうしよう。

 

 April 7th., 2003 卵かけご飯一杯の幸せ

森のただ中の、きれいな水が湧き出る場所へ行った。
肌がすべすべになる温泉に浸かり、新鮮な空気を吸う。

広々としたファームで飼われたニワトリの産んだ卵を、
炊き立てのご飯にかけて食べる。

朝から、ご飯をお代わりして、
まるで育ち盛りの青少年のように。

 

 April 6th., 2003 「365分の1」の情景。

晴れていて、
満開で、
休日で、
二人が一緒、

という日を迎えられたことの幸運。

 

 April 5th., 2003 夕映え桜を、友と、夫と。

世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
(在原業平:古今和歌集)

たとえ千年以上たったとしても。たとえ日本を遠く離れたとしても。
この歌を読んだ彼の気持ちが、憎いほど伝わってくる。

今朝は雨だった。散ってしまわぬかと気が気ではなかったが、
こうして夕日に映える桜を見ることができた。

 

 April 4th., 2003 幹を彩る桜花、幾輪か。

満開の桜の幹。
まるで手品のように、あふれ出すように、現れる桜花。

通り過ぎる人たちに
「見てください!」と言わんばかりの、目線の高さに。

 

 April 3rd., 2003 木蓮の、花盛りの……

部屋の窓から見下ろしていた木蓮の木々。
出かけるとき、バスを待ちながら、近寄ってみた。

甘酸っぱい、やさしい、春の匂いがする。
間近で見れば、こんなにも、ビロードみたいな花びら。

柔らかで、自由で、気高い花。

 

 April 2nd., 2003 天気がいい春の日。ピクニックのようなランチ。

桜が満開の今日。窓辺から芽吹きだした木々を眺めつつのランチ。
今朝焼いたばかりの柔らかな食パンを薄く切り、キューピーハーフと粒マスタードを塗る。
一枚は、スモークサーモンを、一枚はスモークターキーを載せて、
摘み立てのバジルを添える。

半分に折り曲げて食べつつ、絞り立てのオレンジジュースを飲みつつ、青空を眺めつつ、
心の中にまで、春風が吹き込んできそうな、ランチタイム。

 

 April 1st., 2003 一日に一杯の、爽やかさ。

パスタソースの空き瓶に詰めた。
レモンのスライス、ハチミツ、そして酢。
これを冷蔵庫に入れて冷やしておく。

一日に一杯。ときには二杯。グラスに注ぎ、水で割って、飲む。

飲み干せば、ビタミン剤なんてなくても大丈夫、と思える。

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