その6 電車で見かける人々


電車に乗っていると、いろんな人に出会います。

スーツをバリッと着こなしたビジネスマン、お買物に行く途中のおばあちゃん、通学途中の学生、ちょっとスカしている女性(たぶんビジネスウーマン)などなど・・・・。ここまでは日本と変わらないです。しかし、ニューヨークにはそれに人種の広がりが加わってきます。私のような日本人はもちろん、韓国人、中国人、ドイツ人、スペイン人、トルコ人、インド人、ユダヤ人、それにアフリカの方から来ている人々もいます。電車の中は英語だけではないのです。もう何語だか分からない言葉があっちこっちで飛び交っています。これだけでも日本の電車の中と大きな違いなのに、実は、もっと大きな違いもあるのです。それは、“ちょっと普通じゃない人”をよく見かけるということです。

実は、今朝もこの“ちょっと普通じゃない人”に遭遇してしまいました。

今朝は月曜日の朝ということもあり、電車が普段よりもちょっと混んでいました。(もちろん日本の満員電車ほどではありません。)そうした車両の中で、身体の大きな黒人男性が何やら大きな声で叫んでいるのです。それも、ずーっと。

これは私だけではないと思うのですが(たぶん・・・)、黒人男性(特にちょっと普通じゃない人)の使う言葉はよく分からないのです。第一、使用している単語が違うのです。いわゆるスラングと呼ばれているものです。しかし、今朝の男性は、同じことを何度も何度も繰り返して言い続けるので、普段は理解できないこの私にも、彼の言っていることが分かってきました。彼は何度も何度も『俺の前をあけろ!俺の周りをあけろ!俺に寄ってくるな!俺の前をあけろ!俺を邪魔するな!俺が黒人だからって邪魔するな!』と言っているのです。これだけ聞くとなんだかとても物騒な感じがするかもしれませんが、実はまったくそうではないのです。なぜならば、彼はこれを笑いながら言い続けていたのです。

彼の周りにいた他の乗客たちも、怖がるというよりも、呆れ顔といった感じでした。私の隣に座っていた白人男性も『もう少し静かにした方がいいね。』と呟いていました。

要するに、ニューヨークの電車には、“ちょっと普通じゃない人”がよく乗っているのです。日本ではあんまり見ないと思いますが、ニューヨークの電車の中には、一人笑いながら大声を出している人がいるのです。それをよく見かけることがあるのです。

良く言われているように、アメリカは個人主義が発達している国です。従って、よっぽど公序良俗に反することや、法に触れること以外においては、彼の行動や、彼女の人生にコメントすることは失礼に当たるらしいのです。その結果、街にはいろんな行動をとる人が溢れ、特にニューヨークなどでは、そうした人物との係わり合いには危険を伴うこともあるので、そのままになっているらしいのです。と、私の友人のアメリカ人が言っていました。そして、彼の話にはまだ続きがありました。

『ニューヨークというところは世界一、ストレスの多いところなのです。だから精神を病んでしまう人が多くいるのです。彼らにも事情があり、彼らも被害者(sufferer )なのだよ。』

何かの事情で精神を病んでしまった人々が、必ずしも病院に行けるとは限らず、そうした人もこの街に暮らしているというのです。

“触らぬ神に祟りなし”で、別に恐怖に感じることはあまりないのですが、それでも不思議な光景には違いありません。私は、日本ではこのような光景をあんまり見ませんでした。社会が整備されているためか、ストレスが少ないためなのか、その理由は正確には分かりませんが、“あんまり見なかった”という事実だけは確かなことです。

今朝の黒人男性が精神障害者なのか、あるいは単に大声を出したかった人なのかは、分かりません。しかし、その黒人男性の大きな声を聞きながら、ふと、日本はこうなって欲しくないなぁ・・・・・・とつくづく電車の中で考えてしまいました。

精神障害の問題は別にしても、日本人の中にある“共通の道徳心”みたいなものは大事にしていくべきだなぁとつくづく考えてしまいました。先日、テレビ中で、渋谷の高校生が道端に座りながらお化粧をしていました。彼女いわく『だって人に迷惑かけてないじゃん。』なのだそうです。日本人の美徳&道徳心も崩れてきているのでしょうかねぇ・・・・・

ではまた。


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