その3 「メリハリのある生活」考


皆さんは、遅刻をしたことがありますか? 朝寝坊をして、あせって会社に行った経験はありますか? 私はよくありました。

『会社には私1人しかいないのです』

という話をすると、必ずといっていいほど、

『じゃあ、好き勝手ですね。時間なんか関係ないでしょ。羨ましいですね』

と言われます。そう言われたとき、私は決まってこう答えるようにしています。

『確かにそうなんですが、でもちゃんと行っていますよ。日本にいたときと同じような時間には出社してます。私も社会人ですから』

本当はどうなのかということをこの場で白状しましょう。

真実は、まったくいい加減です! 当たり前ですよね。1人での仕事は誰にも干渉されません。何時に出社しても、何時に退社しても誰にも怒られたりはしません。朝ちょっとくらい寝坊をしても別に気にすることなど何もないのです。仮に一日会社に行かなかったとしても、それを咎められることはありません。

こういう状況で、きっちり時間を守れる人は、相当に規律正しい人だと思います。私はそこまで人間が完璧ではないのです。

1人だけの会社になって嬉しかったことを挙げなさい、と聞かれれば、まず、私はこの話をするでしょう。

ニューヨークに来てから最初の1ヶ月間くらいは、1週間のうち、3日は午後出社していました。残りの2日は4時には帰っていました。これが最高なのです。あのときは『あー自由っていいな』と心から思っていました。

しかし、不思議なもので、怠惰な生活を1ヶ月以上も続けていると、逆に少しはちゃんとしようと思い始めるのです。これには、自分でも少々驚きでした。これが、日本人サラリーマンの神経中枢に埋め込まれた“真面目さ”なのでしょうか。やっぱり、ずっとずっとダラーとはしてられないものなのです。なんか世間から取り残されてしまっていくような感じがしたのです。あれほど嬉しがって、遅刻&早退を繰り返していたのに、本当に不思議ですね。

アメリカ人には2種類の人たちがいます。すっごく良く働く人と、あんまり働かない人です。すっごく働く人は、本当によく働いています。朝も7時くらいから出社して、夜も11時くらいまで仕事をしています。一般的にエクゼクティブと呼ばれている人たちは、本当によく働いています。しかし、そんなエクゼクティブの人たちでも、週末を楽しみ、効率的に仕事をこなし、夜仕事がないときなどは、さっさと帰っていきます。家族を愛し、プライベートを大事にするアメリカ人らしい姿です。

私も日本にいるときには、今では信じられないほど忙しくしていました。週末も仕事をしていました。しかし、アメリカに来て、のんびりとした生活を送りながら気がついたことは、アメリカ人のようにメリハリのある生活が大切なのではないかということです。一生懸命に仕事をして、そして、プライベートな時間も大切にする。そういったスタイルです。人生は仕事だけではなく、もっと他にもすることがたくさんあるのです。勉強や、趣味もその1つなのでしょう。そういったことを実行することで、本当の意味での充実した毎日が送れるのでしょう。

普通は生活が仕事だけになってしまったときに、こういったことを感じるのでしょうが、私は、仕事をしなさ過ぎて気がついてしまいました。なんだか恥ずかしいですね。

ということで最近は、私もメリハリのある生活を目指しています。まあ、私の場合は、もっと仕事をちゃんとすることから始めなくてはいけないようですが……

ではまた。


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