その2 一人のランチに思うこと


たった1人になって困ったこと。それは、仕事のすべてを1人でこなさなければいけないということよりも、1人でお昼ご飯を食べるということでした。

日本にいたときは、必ずだれかと一緒にお昼ご飯を食べていました。必ず、近くにいる誰かを誘っていました。もし、誰もいなかったら、誰かを待ったりもしていました。

それなのに、それなのに、ニューヨークでは誘う相手も、待っている相手もいないなんて!!!

提携先の会社の中に間借りしているオフィスなので、廻りにアメリカ人は何人かいます。しかし、一言も話したことのないアメリカ人にいきなり、『ねぇ、お昼一緒に食べない?』と声をかける勇気がなかったのです。彼らにとっても、私は、見知らぬ【別の会社の人】なのです。

そのとき私は、ほんの少しの勇気があれば人生なんて大きく変化するはずなのに……などと思っていました。しかし、その「ほんの少しの勇気」がなかなか出せないのです。好きな人に告白の手紙を渡せない……みたいな感じ。分かります? 実は、中学生の頃にそんな経験がありました。うーん、今考えてみれば、私は、もともとこういう性格なのかも?

悩んでいてもおなかはすくもので、結局、1人で会社の食堂(Cafe)に行きました。1人で食べるお昼ご飯の美味しくないこと、美味しくないこと……。大きなテーブルに1人で座りながら、あーあ、ほんの少しの勇気と、ちゃんと話ができる英語力があったなら……と悩み、沈んでいく私がいました。なんだか転校生みたいな気分でした(私には転校の経験もありません。30過ぎて、遅すぎた転校生デビューって感じですね)。

今、私は「ほんの少しの勇気」を少しずつ、持ち始めています。食堂(Cafe)の壁に自己紹介のポスターを貼ったりしています。

英語はまだまだですが、言葉の壁も「ほんの少しの勇気」で乗り越えていくべきものなんだ! と思い始めています。

昔から「なせば成る。なさねば成らぬ何事も。」って言うじゃないですか。最近では少しづつアメリカ人と顔見知りになってきてはいます。とはいえ、まだまだ1人でお昼ご飯を食べる日が続いていますが……。

今でもたまに、他の日系企業みたいに同じ会社、同じ仕事の中に、アメリカ人と日本人が一緒にいれば、すぐにでも友達が出来るのに……などと状況を批判してしまう日もあります。しかし、状況は批判しても変化するはずはなく、単に批判してても何も始まらないのですよね。なんてたって、たった1人の駐在員なのですから! 要は、まだまだ勇気が足りないのです。

さてと、今夜もよく寝て、「勇気」を充電して、さあ明日も元気に会社に行くぞ!


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