その10 ニューヨークの大雪と、税金と。


さて、久しぶりの駐在員日記ですが、スペイン旅行記も無事に?終わってしまったので、今回はニューヨークでの生活編に戻りたいと思います。

本日は3月4日(日)です。天気は小雪。気温は摂氏2度くらいだと思います。

天気予報によると、この雪は火曜日の午前中くらいまで降るだろうとのことです。なんでニューヨークはこんなに雪が多いのでしょう?これが普通なのかもしれませんが、東京生まれの東京育ちの私にとっては、ここは豪雪地帯(言い過ぎかな)のようにも感じられます。

確か、この冬に初めて雪を見たのは10月の終わりだったと思います。それから、3月のあたまの今日も雪なのです。私は、雪は嫌いではないのですが、でも、こう何度も降られると、正直、うんざりなのです。私は幸いにも、マンハッタンの中に住んでいるので、雪による交通機関の乱れなどに巻き込まれたことはないのですが、お隣のニュージャージーに住んでいる人などは、本当に大変みたいです。先々週降った雪の日などは、会社から家に帰るまで、普段は1時間くらいのところを、3時間かかったと言っていました。本当に、お気の毒さまって感じですよね。

年末に大雪が降ったとき(私がスペインから帰ってきた日)、ニューヨークのジュリアーニ市長は、テレビで除雪について力説していました。内容は『新世紀を目前にして、私たちニューヨーク市民が雪で苦しむことはない。除雪は完璧に実施する。雪のために、ニューイヤーパーティーが出来ないなんてことは一切ない。』と言っているのです。これをニュースで大きく取り上げているのです。私は初めてみたとき、『なんで除雪に関する市長のメッセージが大ニュースなの?』と思っていました。しかし、実はこれには訳があったのです。

この訳については、つい最近理解しました。

実はそれは税金と関係があるのです。アメリカで仕事をしていると、自営業者であろうと、会社員であろうと、確定申告が義務つけられます。もちろん駐在員である私にも、その義務があります。ちょうどこの時期、多くの人が確定申告書類の整理に追われているのです。日本では会社が個人の給与から税金を天引きしていきますよね。時には、自分がいくら税金を払ったのかが分からなくなるときがあると思います。基本的なシステムは一緒なのですが、アメリカでは、自分が今年1年でいくら税金を払ったのかを個人で確認する必要があるのです。そして、その金額を計算して、個人で国税庁に提出するのです。会社での申告ではなく、個人からの申告が義務なのです。

するとどういうことが起きるか?

簡単なことなのですが、税金に対する関心が一気に高まるのです。自分が払った税金額が1セントの単位まで分かるのですから。逆に、知らなければならないことなのです。こうして払った税金なので、多くの人はその使い方についても、強い関心を持つようになります。これが除雪との関係なのです。

一概には言えないかもしれませんが、仮に雪が降って、市が除雪を怠った。そうなると、市民は『俺たちの税金はどうした?あんなに高い税金を払わせておいて、うちの前の道が除雪されてないとは何事だ!』となるらしいのです。

ましてや、1年に1回のニューイヤーズ・イヴの晩に市長が『雪が降ったので、みなさん足下に気をつけて。除雪はご近所で協力して・・・・』なんて言ったら、たちまち大問題になるのだそうです。

アメリカ人の政治に対する興味や関心が、日本人とどの程度違うものかは正直分かりません。もちろん個人差もあると思います。しかし、こと税金に関しては、圧倒的にアメリカ人の方が関心が高いように感じられます。私が働いている会社の中をみても、それを感じることがあります。彼らには、国が定めた厚生年金はありません。(日本の厚生年金だって怪しいもんだと思いますが・・)

彼らは自分たちで年金プランを立てるのです。401Kプランなどがそれにあたるものです。この401Kプランは当然ながら税金優遇措置が採られています。彼らは、年間にいくらこの401Kに投資するべきか、そして、将来への貯蓄を考えると同時に、税金をいくら軽減させるかを真剣に考えているのです。(もちろん401Kへの投資額には上限があります)また、出張などの日数によっても市税が変わるので、これも必死で計算しています。勤務日数や休日数、出張などによるニューヨーク以外での就労日数、出張先での出費額、内容などなど・・・事細かに彼らは計算しているのです。そりゃあ、税金に対する関心も高くなるはず、と納得してしまいます。予想外かもしれませんが、アメリカは日本と同じくらい高税率なのです。だから、みんな節税に必死になるのです。

だいぶ昔に、日本は最高の『社会主義国家』と言った人がいました。確かにそうだったかもしれません。なんでも国が面倒みてくれて、個人はみんな自分を中流だと思っている。でも、これからは時代が変わるかもしれません。個人で税金の使い道くらいには、関心を持たないといけないのかもしれません。日本も高税率で、みんな高い税金払っているのですから。

最近では私も、アメリカで暮らしているのにも関わらず、少しぐらいは税金などに関心を持ってみるのも悪くないかな、などと思い始めています。

こんな結論で変ですが、今ふと、『蟻とキリギリス』 本当に得したのはどっちなのかな?などと思ってしまいました。

ではまた。


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