その1 初めての転勤


ニューヨークに来て、早5ヶ月が経とうとしています。私は、これからニューヨークでの初めての冬を経験しようとしています。寒さが苦手な私にとって、これは迫りくる恐怖との戦いのようです。

初めてといえば、今から5ヶ月前、私の会社員生活で初めての“転勤”を経験しました。初めての転勤=ニューヨーク駐在だったのです(いきなり海外!)。

そして今、私はニューヨークに住む日本人駐在員の1人となっています。英語レベルは英検3級。海外生活経験ゼロ。ニューヨークに知人・友人ゼロ。こんな私の駐在員生活を、今後ご紹介していこうと思います。

私はみなさんが想像されている日系企業に勤める日本人会社員=いわゆる“駐在員”とは少し違います。なぜなら、私の会社には、私1人しかいないからです。1人での仕事にはいろんなことが起こっています。真剣に海外転勤を希望されている方にとって、参考になるような話は少ないと思います。いい加減な会社といい加減な駐在員の話として、気楽に読んでいただけたら幸いです。

前置きはこれぐらいにして、まずは私の自己紹介をしたいと思います。

ふじやま太郎。30歳、独身。出身は東京都です。血液型はO型です。海外旅行にはよく行っていましたが、留学の経験はありません。英語は中学2年のときに英検3級をとったぐらい。オフィスは、マンハッタンの中にある提携先のアメリカの会社の中に間借りする形で、小さな小さな部屋が1つだけ。そこが私の勤める会社です。社員は私1人 7i",7i",、.. 7i",7i",藏JIYA~1HTM 7i",7i",藏JIYA~2HTM 7i",7i",藏JIYA~3HTM 7i",7i",藏JIYA~4HTM 7i",7i",藏JIYA~5HTM 7i",7i",藏JIYA~6HTM 7i",7i",藏JIYA~7HTM 7i",7i",藏JIYA~8HTM 7i",7i",藏JIYA~9HTM 7i",7i",藏JIY~10HTM 7i",7i",藏JIY~11HTM 7i",7i",藏JIY~12HTM 7i",7i",薇DEX~1 HTM 7i",8i",フョ桂 ッァ>SQ[ ったの1週間だったからです。たったの1週間で彼がこれまで行っていた作業の全てを私は理解しなくてはならなかったのです。

現在の業務内容、取引先各社について、お得意さまについて、経理処理の方法、支払い、売上げ、消費税、納税の仕組み、銀行口座のこと、個人所得税の仕組み、会社の備品、資産について……などなど。もうこれは、最小のメモリーチップしか搭載していない私の能力を遙かに超えたものでした。

しかし、前任者と私しかいないこの状況で『メモリー不足です』と言ったところで問題の解決にはなりません。昔、小学校の先生が言っていました。『覚えられないことは、とにかくノートに書いておきなさい』と。なぜかその瞬間私はずっと忘れていたその先生の顔が思い出され、とっさに会社にあったノートに彼の言葉を書き写しまくりました。(その先生は大嫌いでしたが、このときばかりは感謝!でしたね)このような単に“バケツの水をとなりのバケツに移すだけ”的な引継は朝から夜まで続けられ、ときに挨拶廻りなどのスケジュールなどもあり、とっても激しい1週間でした。

“激動の1週間”が過ぎ、ついに前任者が帰国する日になりました。私は彼を見送るため、彼の宿泊しているホテルまで行きました。彼はすでにチェックアウトを済ませて、空港に向かう車を待っていました。短い会話の後、車がホテルの前に到着し、ドライバーが彼の荷物をトランクに入れ始めたとき、私はこれまでに感じたことのない恐怖感を感じました。そうなのです。恐怖なのです。大丈夫かなぁとかいう不安感を通り越した恐怖感なのです。すでに引継初日にメモリーがパンクしていた私が、このニューヨークでたった1人でやっていけるのだろうか? 1人しかいないとはいえ、会社の責任者としてやっていけるのだろうか? 小雨が降る中、彼を乗せた車は、私の目の前から走り去っていきました。

私は彼の車が見えなくなってから、地下鉄の駅に向かい歩き始めました。歩きながら私は何度も帰りたいと思いました。しかし、帰れるはずもなく、とにかく地下鉄に乗り込み、本当に私1人になってしまった会社に向かいました。

地下鉄の中では、人間は諦めたらそこで終わりになる。やって出来なかったらしょうがないけれど、やらないで逃げちゃいけない!って言い聞かせていました。私は体育会経験もないのですが、このときばかりは、かなり体育会入っていました。もう理屈じゃない、根性だあ!みたいな。

今考えれば、殺される訳ではないし、大したことではないんですが、あのときはかなり緊張していたと思います。そんな緊張感を持っていたこの私が、何故、ここまでいい加減な駐在員になってしまったのか? そのあたりについては、また、次の機会にでも紹介してきたいと思います。ではまた。


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