悲劇的なサービス(1)
2/20/2000

 アメリカに暮らし始めると、誰もが少なからず驚き、呆れさせられることに「サービス業のサービスの悪さ」が挙げられるだろう。トラブルは渡米の第一歩を飾る引っ越しの時から始まる。例えば家具や電化製品など、業者に配達を頼んでおいたものが、予定通りに届くことが、まずないのだ。ドアマンがいないところに住んでいると、家具など大きなものが配達される日には、仕事や学校などを休んでの自宅待機が必要となる。配達時間の設定が幅広いから、たいてい一日がつぶれる。時間通りに来ないならまだ許されるものの、結局その日は届かずじまい、ということも少なくない。ここでまず、アメリカのサービス事情に慣れていないたいていの日本人は切れる。

 すったもんだの末、ようやく家具が届いたとしよう。さて、梱包を開いてみると、あれ、頼んでいたものと違うものが入っている。そこでまた怒りがこみ上げてくる。受話器を上げ、おぼつかない英語で「違う家具が届いてるんだけど、どうするつもり! 一刻も早く送ってよ!」とまくしたてるが、のれんに腕押し状態。無駄な時間が流れていくばかりだ。わたしの場合、郊外にあるIKEA(アイケア)と呼ばれる家具・インテリアのチェーン店で、組立式の家具をよく購入するのだが、ここでも同種のトラブルが頻発する。本棚や机などを組み立てはじめ、最後の段階、というときになって大切なネジが不足していることに気づく。ネジの代わりに家にあった釘をガンガン打ち付けてお茶を濁したこともしばしばだ。しかし、それがなくては形にならない、あるいは崩れてしまう、といった大黒柱的な部品がない場合は最悪である。しかし、その部品を再オーダーするのは極めて危険。正しいものがすぐに届く確率は非常に低いからだ。いつにまでも中途半端な家具を部屋に転がしておくわけにはいかないので、近所の日曜大工の店に出かけ、似たような部品を購入するなどして、その場をしのぐ。

 「そんな店からは、二度と買わなければいいじゃないか」と思うだろう。でも、どの店も似たり寄ったりのサービスなのだから仕方がないのだ。

 最近は景気がよくなったせいか、なんとなくマンハッタンのサービス全体がよくなった気がする。いや、もしかすると自分がこの環境に慣れてしまっただけかもしれない。(M)


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