今日の夕食は鶏肉の煮付けと野菜炒め、それにちらしずしだった。ここは日本か、と思わせる、純和風のメニューである。先日、muse
new yorkのVol.
3を配達に行った折、お隣のニュージャージー州にあるミツワ(旧ヤオハン)で、大量の日本食材を購入しておいたのだ。マンハッタンにもいくつかの日系食料品店があるが、ミツワの規模にはかなわない。 カリフォルニアで生産されている日本米「秋田こまち」をはじめ、海苔、醤油にみりん、味噌、インスタントラーメンなど保存のきくもの、またアメリカのスーパーでは手に入らない生鮮食料品(地鶏肉や豆腐、薄切り牛肉など)も買い込んだ。きめの細かい日本の食パンや和菓子、それに、今日のテーブルを飾った「N谷園のすし太郎」も。 わたしのボーイフレンドはインド人だが、日本料理がたいへん好きである。納豆以外はなんでも食べる。その彼の好物の一つがこのちらし寿司だ。「あったかご飯に混ぜるだけ」という舞台裏を知らないものだから、「ミホは本当に、料理がうまいよねえ」と感心しながら食べるのである。いいことだ。 「やはり地鶏は身がしまっていておいしいなあ……」と思いつつ箸を口に運んでいると、ボーイフレンドがこういった。 「ねえ、ニワトリのコンタクトレンズって知ってる?」 なんだそれは。またバカなことをいい始めた……と、ろくに返事もせず食べ続けていると、さらに彼は続ける。 「仕事でケースを検討しているときにね、知ったんだけど。ニワトリのコンタクトレンズを作っている会社があるんだよ」 どうやら、ふざけているわけではないらしい。アメリカの中西部のとある会社が、ニワトリ用の赤いコンタクトレンズを作っているというのだ。養鶏場のニワトリは、自由に身動きが取れない分ストレスがたまり、隣合わせたニワトリと激しい喧嘩をすることが多いのだという。殺し合いにまで発展することもあり、養鶏場のオーナーにとっては損失である。 そこで開発されたのが赤いコンタクトレンズ。これをつけたニワトリたちは動きが緩慢になり、ひたすら餌を食べ続けるのだという。 なんだかいやな感じの話ではないか。それでなくても、アメリカのスーパーマーケットで売っている鶏肉は脂肪分が多く、身も柔らかく、だらしなーい感じである。赤いコンタクトレンズなんぞを付けさせられ、最低限の運動さえしなくなったニワトリは、いったいどうなるのか。 目にゴミが入っても取ることもできず、赤く包まれた世界の中でボーッと餌ばっかり食べて育つニワトリ。そのニワトリを食べる人間までボーッとしてしまいそうである。それにしても、人間とは、本当にいろいろなことを発見するものだとつくづく感心する。 人間が赤いコンタクトレンズをつけるとどうなるのだろう。やはり闘争心がなくなるのだろうか。気が長いタイプではないわたしにはいいかもしれないが、ひたすら食べ続けるのは、かなりまずい。(M)