6/2/2000 MITの同窓会 その2 私が最初に参加したイベントは昨夜、ボストン交響楽団で行われたコンサート。クラシックのほか、60年代、70年代のポピュラーソングや映画音楽などが演奏され、肩の凝らない楽しいひとときだった。 そして今日、A男と私はテニスやゴルフ、市内観光などさまざまに用意されたプログラムの中から、「ゴルフクリニック」という、超初心者向けのプログラムに参加した。我々は、一度もゴルフをしたことがないのである。アメリカにはゴルフ場がたくさんあるのだし、カジュアルなスポーツだからやっておいて悪くはないだろうという軽い気持ちで参加した。 余り人気のないプログラムらしく(そりゃそうだろう、たいてい、皆、ゴルフができるものなのである)、参加者は総勢12名といったところ。うち7割は老人同窓生である。長い人生において、ゴルフをするタイミングを失ってきた人たち。 だだっ広いグラウンドの芝生の上で、まずはクラブの握り方から練習。手袋など何の用意もない私たちは、数回素振りを繰り返しただけで、早くも手に豆を作ってしまった。声ばかり大きいインストラクターから、かなりいい加減なやり方で素振りの指導を受けたあと、各自、ボールを7つずつほど与えられて、今度は実際に打つことに。 「たったこれだけのボールじゃ、すぐなくなるじゃん」 そう思ったのも束の間。当たらないものである。クラブにボールが。たまに当たったかと思えば、思いも寄らぬ方向に、わずか数メートル転がるばかり。半径10メートル以内にボールが散らばるだけなので、7つほどのボールが長くもつこともつこと。ゴルフがこんなに難しいとは思いもよらなかった。 ひとしきり打った後は、みんなで一斉に球拾い。のんきにおしゃべりをしつつ、だらだらと歩きながら、ボールを集めていく。 ほとんど何の成長もなく、3時間を費やした。こりゃ、これから真剣に練習してみよう、と思ったりもした。 午後はMITのキャンバス内にあるミュージアムを巡ったり、ボストンのNewbury
Streetというお洒落なブティックやレストランが立ち並ぶエリアを散策したりして過ごす。 MITのミュージアムでは、世界一といわれるホログラム(レーザー光線などを利用して、空間に立体的な映像を映し出す光学技術)の展示に感嘆した。大きいものは上下左右60〜70センチほどもある。のぞき込むと恐ろしくリアルな人間や動物がそこにいる。見る角度を変えるとホログラムが動いて見えるものもあった。 子供のころの教科書に載っていた、ミルクのしずくが飛び跳ねた瞬間にできる「王冠」の実験や、リンゴに銃弾が貫通する瞬間をとらえた映像など、見覚えのあるものもある。 一つのモーターを使って動く、さまざまな物体やオブジェの展示も興味深かった。 「最新のテクノロジー」というものは、子供の理科の実験の延長線上にあるのだなあということを感じたりもした。そういえば、科学者であるA男の姉婿も言っていた。 「実験はね、料理に似ているんだ。なかなか楽しいよ」 今日の夕食は、前々から楽しみにしていたロブスター! A男の家族とともに、ボストンで最も有名なシーフードレストラン
Legal Seafoods
に繰り出す。ボストンはシーフードが有名で、ニューイングランド・クラムチャウダーの本場でもある。 まずはボストンの地ビールであるSamuel
Adams
で乾杯。アサリがたっぷり入ったこくのあるクラムチャウダーに焼き立てのパン、そしてあつあつゆでたての大きなロブスター! 殻と格闘する我々は、皆、無口。食に集中している。プリッと歯ごたえのある身に、黄金色の溶かしバターをほんのちょっと付けて食べると、もうおいしいことおいしいこと。ベイクドポテトも程良い焼き加減。付け合わせのインゲンの歯ごたえもいい。ロブスターの頭の「みそ」のあたりが、またおいしい。なんと幸せなひとときであろうか。 ふー、満腹。で一息つくと、デザートメニューがやってくる。チーズケーキのストロベリーソース添えにホットアップルパイのバニラアイス添え、チェリーパイもおいしそう……。食べたいけれど、私もA男も太りやすい体質。姉夫婦に比べると我々はかなり肉付きがいい。今日のところはコーヒーにしておこうと我慢するが、姉夫婦にお父さんはしっかり一つずつデザートを注文している。 彼らは細いけれどよく食べるのである。これは明らかに不公平だ。恨めしげな気持ちを悟られまいと、涼しい顔してコーヒーを飲み、晩餐を締めくくった。