5/7/2000 ゴールデンウィーク・マンハッタンへ いきなり昨日、今日と、真夏日である。なぜこんなにも、メリハリのある気候だろうか。過ごしやすい春は束の間、突然、過ごしにくい蒸し暑さが襲って来る。この季節、建物やバス、地下鉄内には強烈な冷房が効き始め、外気との差が極端に激しくなる。体調を壊しやすい時期でもある。 本来、わたしは暑さに強いので、冷房は控えめにして欲しいのだが、アメリカの冷房はアメリカ人の皮下脂肪を超えて神経に達するよう、超低温の設定されるため、必ずジャケットやカーディガンの携行が必要となる。冷房に苦労している人は少なくないはずだ。 さて、昨日は土曜日。来週の母の日のプレゼントを探しに五番街に出かけた。日本へ発送するので、この週末に買っておかなければ間に合わない。57丁目を西から東へ向かって歩く。七番街、六番街と横切っていくうちに、道行く人がどんどん増えてくる。五番街にさしかかる頃には、お祭りのごとき人手である。最近は、年を追うごとに観光客が増え、街が賑わっているように思う。安全になったと言われて久しいせいだろう。それにしても、日本人も姿がいつにも増して多い。 そう、今週はゴールデンウィークだったのだ。この時期、マンハッタンでは、五番街周辺の警官を増員して、日本人旅行者を盗難から守る非常警備体制が取られる。グッチやティファニー、フェンディにプラダの紙袋を下げた日本人が往来する。それにしても、いつも思うのは、日本は不景気だ不景気だと騒ぎ続けている割には、世界各地の有名都市を訪れ、ブランド物を買うという傾向は変わっていない。もちろん、ここしばらくはバブルの頃よりは減っていたかもしれない。しかし、これまで各地を取材などで旅行して、日本人旅行者を目の当たりにしてきて思うのは、経済的に中流クラスの人々がそろってブランド物を買うというのは日本ぐらいだ、ということだ。 ここで、ブランド物を買うことについての善し悪しは問わない。自分のお金で好きな物を買うのだから、他人がとやかく言うことではないし……。 韓国、台湾などにも同じような傾向はあるが、不景気が訪れるとその数は激減する。特に、2年ほど前、韓国に大不況が訪れたとき、ニューヨーク市立大学をはじめ、全米各地に留学していた韓国人学生が、学費が払えなくなり帰国した。あまりに多くの韓国人が帰国を迫られていたため、奨学金制度の見直しがはかられるなど、ちょっとした社会問題になった。翻って、日本が不景気だから日本人学生が皆、帰国したという話は聞かない。 日本には、潜在的な経済力が、あるのではないか? 素人判断ながらも、異国に住んでいると、身をもってそれを感じる。日本という国は、不景気という言葉に踊らされ過ぎているように思う。その不景気もしばらく前に底を打ったと聞いたが……。堺屋さんの形容が詩的なだけに、いまいち具体的な状況がつかめないけれど。 話が長くなったが、結局、人いきれにやられた私は、買い物を続ける根性をなくし、夕べ、インターネットで「花キューピット」の花束を贈ることにした。ちょっと不完全燃焼である。