10/1/2000 アジアな午後(写真はこちら) 

 今日は日曜日。午前中、部屋の掃除や洗濯などをすませたあと、午後はこの先1週間の食料品などを買い出しに行った。マンハッタンは車がなくても生活するのになんら支障はないが、アメリカ合衆国の大半の都市、町においては、車なしでの生活は不可能だ。ショッピング、子供の学校の送り迎え……、何につけても車が要る。郊外には、至る所にモールと呼ばれるショッピングセンターが点在していて、食料品や生活用品を買い出しに、人々は車で繰り出していく。

 今日、私とA男が出かけたのは、コリアン系のショップやレストランが連なるモールだ。広大な駐車場にも関わらず、空きスペースがない。誰かが出て行くのを待って駐車するしかない状況だ。なんとか車を停め、巨大なスーパーマーケットに入る。この店は、日本の食料品も扱っているHan Ah Reum というチェーン店で、マンハッタンの郊外にも何軒か店を持っている。

 大きなショッピングカートを押して店内に入るや、その混雑ぶりに驚かされる。10 カ所ほどあるレジの前は長蛇の列だ。これは時間がかかりそうだなと思いつつ、ショッピングを開始。入り口に、山のように積み上げられたお米を、まずは一袋。日本語、ハングル、それぞれのパッケージがあるが、私はカリフォルニア産の「玉錦」を購入。ほかに「国寶ローズ」「田牧米」といった銘柄もある。いずれもカリフォルニア産だ。かつて、カリフォルニア米といえば、やや長めの中粒米などが多かったらしいが、最近のものは日本で作られる米と同じ短粒米で、とてもおいしい。

 ここでは、他のスーパーマーケットでは手に入らない、アジア系の生鮮食料品がたっぷりと揃っている。直径が15センチほどもあるニラの束や、観葉植物のように青々としたネギ、量り売りの大豆モヤシ、レンコン、ハクサイ、シイタケなどを次々にカートに入れる。片手で抱えきれないほど大きなキムチの瓶詰めや、豆腐(絹・木綿)、コンニャク、魚のミンチに厚揚げ……。A男の好物であるライチーも購入。

 さて、次は肉売り場。アメリカのスーパーマーケットには、ステーキ用の厚切り肉しか置いていないが、コリアン系は薄切りの焼き肉用、すき焼き用、しゃぶしゃぶ用の牛肉があるからうれしい。豚肉や鶏肉の部位も豊富に揃っている。そればかりか、ブタの鼻や耳がそのままパックされていて、強烈だけどおもしろい。どうやって調理するのだろう。

 チャイナタウンもそうだけれど、魚売り場の充実度はコリアンも負けてはいない。アメリカのスーパーマーケットで買える魚は、せいぜいサーモンがいいところ。あとは鮮度が怪しいものが多く、魚に厳しい日本人には、なかなか手が出ない。しかしここは違う。生きのいい魚がずらりと揃っている。サバもタイもタチウオもイカもある。私は身が締まったヒラメを選んだ。ワシントンDC 郊外にはカニ(Crab) の漁港がたくさんあるだけあり、生きたカニも山積みされている。勢い余ってかごを飛び出したカニが床を歩いていたりして、なんともワイルドだ。

 それにしても、ここは東アジア人のパラダイス。黒い髪、黒い瞳の人たちばかりだ。コリアンを中心に、中国語、日本語も聞こえてくる。もう、誰がなに人だか、さっぱりわからない。とにかく込み合った店は、独特のアジア的世界が広がっていて、妙に気持ちが高ぶってくる。

 加工食品のコーナーは、ハングルと日本語が入り交じったパッケージが陳列されている。海苔、昆布、カレー、味噌、麺類、するめなどの干物……。こうしてみると、日本とコリアンの食生活は似たようなものがたくさんある。一方、大きな袋に入った真っ赤な唐辛子などを見ると、似ているけどやっぱり違うな、とも思う。いずれにせよ、アメリカ人から見れば大差ないことには違いない。

 肉まん、餃子、枝豆などの冷凍食品、柿ピーやカッパえびせん(コリアンバージョン)、蒟蒻畑(ゼリー)などのおやつ、それから日本酒なども買い込んで、レジに並ぶ。長蛇の列は相変わらず。30分はゆうにかかりそうだ。文庫本を読みながら列を待つ日本人のお父さんがいた。待たされることを心得ている。ぬかりがない。

 私は、カートをA男に任せて、もう一度店内を巡る。常時携帯しているデジタルカメラでこっそりと店内を撮影。竹製のしゃもじや、身体を洗うナイロンタオルなども買った。

 山ほどの食料品を買ったけれど、値段は随分安い。繁盛するのもよくわかる。買い物を終え、すっかりおなかが空いた私たちは、早めの夕食をとるべく、今度はベトナミーズのモールへ車を走らせる。ここにはベトナム系のスーパーマーケットやレストランが立ち並んでいる。どの店がおいしいかわからない私たちは、数店のレストランをのぞき込み、賑わっている店を選んで入った。ベトナムの33というビール(薄味)で喉を潤した後、ベトナム風の生春巻き、揚げ春巻き、そしてシーフードの硬焼きソバに、カニのショウガとネギソース和えを食す。どれもこれも、おいしい。特にカニはショウガとネギの風味が利いていて、きちんと身も詰まっていて最高だった。2人ともおなかいっぱい食べて、チップ込みで28ドル。マンハッタンの半額以下である。

 アジアのエネルギーを補給して、今夜は何となく気分がいい。

 さあ、明日も仕事、がんばるぞ。


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