8/17/2000 印刷工場の日(1)

 今は朝の10時。クイーンズにある印刷工場の近くのマクドナルドにいる。

 ニューヨーク市は、細長い島であるマンハッタンをはじめ、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、スタッテン島という5つのボロー(区)から成っていて、今、私がいるクイーンズへは、マンハッタンから地下鉄に乗り、イーストリバーをくぐって来ることになる。最近はマンハッタンのレント(家賃)が高いので、クイーンズやブルックリンに住む人が増えはじめている。

 さて、muse new york Vol.5の印刷のために工場に来ているのだが、以前も書いたように、なにしろ小さな工場だから、オフセットの1色刷り印刷用の機械は1台しかない。1回の印刷で、大きな紙に4ページ分を刷る。刷り上がりを見てインクの汚れがないか、濃淡は適当か、版のずれがないか、などさまざまなチェックをし、問題がなければ、1万枚を刷る。1万枚を印刷し、プレートを取り替え、機械を調節するなどの作業にだいたい2時間少しかかる。今までのmuse new york は16ページだったので、その作業を4回繰り返すだけでよかったのだが、今回は20ページ。だから5回。1日にできる印刷は4回が最大限だということで、昨日、4ページ分を印刷して、今日残りを印刷するという段取りだった。

 先程印刷所に行き、1回目の印刷に問題がないことを確認して、じゃあ、次は11時30分ごろに来るわね、というと、担当のお兄さんが、2時に来いと主張する。なんでも大急ぎの仕事が入ったと言うのだ。そのあと、4時、6時と続けて印刷するとのこと。間に他の仕事を入れてなお全部仕上げられるってことは、1日で昨日の分も含め、印刷できたってことじゃない。何だか納得がいかない……。

 まあ、今日は一日、印刷所周辺で待機する覚悟でこうしてノートブックも持参しているのだけど、これから4時間をマクドナルドで過ごすのは厳しい。一旦オフィスに戻るには、往復の時間がかかりすぎて、何だかもったいない。この近辺、気の利いたカフェなどあるわけでもなく、郊外型のモールやガソリンスタンド、ファーストフードショップ、デリ、そしてダイナーがあるくらい。そのうち、ノートパソコンのバッテリーも切れてしまうだろう。

 だめだ、さっきから、キッチンの方でピーピーと電子音が鳴っていて、頭が痛くなってきた。ここには落ち着いていられない。残りの3時間、どこで過ごそうか。


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