最新の片隅は下の方に

 

March 1, 2006  証拠

マンハッタン。

五番街のクリスマス。 

ワシントンDC。

カテドラルのビショップスガーデン。

我々がここにいる理由を、

静かに伝えている。

 

 

 

March 2, 2006  歴史

40年前。年若い両親は、貧しい貯えの中から、小さな、しかし精一杯の雛人形を、初節句を迎えるわたしのために、買った。それから3年後、妹が生まれた時には、お内裏様とお雛様だけの、しかし大きくて上品な、雛人形を買った。

子供心に、ガラスケース入りの小さな雛人形を、地味なものだと思っていた。一方、妹の雛人形は、今思えば大人っぽい趣味で、子供の好奇心をそそるものではなかった。

だから幼稚園の友達の家の、赤い毛氈が敷き詰められた「豪華七段飾り」な雛人形を見て、うらやましかった。

けれど、こうして小さかったからこそ、緩衝剤に包まれて、小さな段ボール箱に詰められて、東京、ニューヨーク、ワシントンDC、そしてインドまでも、連れて来ることができた。

あちこちに、傷みがあるのもまた、歳月。今となっては愛おしき、小さな人形ら。

 

 

 

March 3, 2006  朝日

朝、ヨガを終えて、1杯の水を飲む。

「おはよう」と言いながら、キッチンに入る。

いつもとは、異なる光。

バルコニーの向こうの、

壁に落ちる朝日の具合が、夏。

白い光の帯が、

無防備な朝の心を、滑らかに射抜く。

 

March 4, 2006  雨

朝、目覚めたら、

木々に積もっていた埃の粒が、

洗い流されていた。

ここに暮らしはじめて初めての、雨。

生まれ変わったように、

異なる朝、緑の風景。

 

 

 

 

March 5, 2006  旅

それが「旅人の木」という名前だというだけで、なのだろうか。

旅人の木は、いつ見ても、旅情をかきたてるような様子で、

ひらひらと、風に吹かれている。

愛おしく、眺めている。

 

 

 


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