土砂降りの朝。まだ薄暗いうちに、サンフランシスコ空港までタクシーを飛ばす。もう、一カ月以上も、雨模様が続いているのだという。こんなにも雨の続く春は初めてとのことで、タクシーのドライヴァーもうんざりとしている様子だった。 さて、淀んだ空の西海岸を脱した我々は、ユナイテッド航空の直行便にてカウアイ島へ。約5時間の空の旅の果て、青空の広がるカウアイ島に到着した。 ハワイといえば、ワイキキビーチでおなじみホノルルの街があるオアフ島がよく知られているが、そこだけがハワイではない。ハワイは、最南端の大きな島、ハワイ島をはじめ、マウイ島、ラナイ島、モロカイ島、カウアイ島と連なる島嶼「ハワイ諸島」から成っている。 我々が今回訪れるカウアイ島は、最北端に位置するハワイ諸島最古の島だ。島に関する詳しい情報は、カウアイ島観光局のサイトをご覧いただければと思う。 さて、空港に降り立った我々は、吹く風の涼しさに驚く。もっと蒸し暑い熱帯雨林性の気候を想像していたのだが、風は軽く爽やかで、暑さを感じさせない。 まずレンタカーオフィスへ。インターネットでスタンダードカーを予約していたが、気候の心地よさと開放的な空気を楽しもうと、コンヴァーチブルを借りることにした。以前からコンヴァーチブルを運転したがっていた夫はご機嫌だ。 空港のあるラフエは島の南東、つまり右下あたりに位置する。滞在先のホテルはそこから西、つまり左に走ったところのポイプと呼ばれる一帯にある。 道路はさまざまな種類の、熱帯の木々に覆われており、目に飛び込んで来る緑は濃く、瑞々しく、風もまた緑の香りをたっぷりと含んでいる。
DAY01:
雨のサンフランシスコを離れ、ハワイ諸島のカウアイ島へ。
APRIL 5, 2006
空港に到着したら、まずはレンタルカーのオフィスへ。車種はインターネットで予約していたが、窓口で変更。 ハワイ諸島の中では最も降雨量の多いカウアイ島。それだけ緑も豊かなのだ。
片側一車線の狭いハイウェイを、のんびりと走り抜けて行く。車窓から、海の香り、緑の香りが渾然一体となって吹き込んで来る。南の島の、風。なんとも言えぬ気持ちよさだ。
食後は、ローカルな雰囲気のショップを数軒眺め歩き、短パンや帽子などを調達し、いよいよホテルへ向かう。海岸に平行した道を海辺に向かって左折した瞬間、視界に、白波をたたえた紺碧の海が目に飛び込んで来た。 背の高い椰子の木が、風にゆらゆらと葉を揺らめかせている。なんて幸せな光景だろう! 「アロハ! ようこそカウアイ島へ!」 ホテルでは、ハイビスカスの花模様が施された衣服に身を包んだスタッフが、朗らかな笑顔で迎えてくれる。 カウアイ島もまた、数日前まで、1カ月以上も雨が降り続くという「異常気象」が続いていたのだという。そもそも、カウアイ島は他の島々に比べると雨が多い島とのことだが、四六時中、降り続けているわけでは当然ない。今回の降雨は桁外れだったとか。 「こんなに降り続く雨は、ここ55年なかったことなんですよ」 「ここしばらくは、訪れるお客さまが、本当にお気の毒でした」 と、ホテルのスタッフ。島の一部では洪水が起こり、雨量の多さで海水も濁っているとのこと。ようやく昨日あたりから青空が見え始めたのだという。それでも、今、我々の視界を端から端までを網羅する水平線の上下は、いずれも濃く青く、すばらしい色合いだ。 晴れはじめたころに到着した我々は、非常に幸運だったようだ。 アルヴィンドは、早速、水着に着替えて泳ぎに出ると言う。ここ数年、日差しアレルギーらしき症状に悩まされているわたしは、たっぷりと日焼け止めを塗り、しかし今日はまだ泳ぐことなく、椰子の葉そよぐ海辺の風の中で過ごそうと思う。 パイナップルやライムなどのジュースにダークラムを加えたカクテル、マイタイを飲みながら、ゆるやかで優し気な動作のフラダンスを眺める。 居合わせた人が尋ねる。 「あなたはどこから来たの?」 「……インドです。日本人ですけれど。」 「え? インド? インディアナじゃなくて?」 「いいえ。アジアの、インド。夫がインド人なので」 「ワオ! ずいぶん、遠くから来たのね」 まったくだ。わたしたちは、なんて遠いところから来たのだろう。 (インドかよ。) と、自らに突っ込みを入れたくなる、夕暮れの海辺。
目前に水平線が見えて来た! いよいよホテルに到着だ。 ホテルでは毎日午後5時から6時まで、マイタイを飲みながらハワイアンダンスが楽しめる。いきなり南国気分に。
すっかりお腹が空いたわたしたちは、滞在先であるポイプビーチに到着したものの、ホテルにチェックインする前に、ランチをとることにした。ポイプショッピングヴィレッジに車をとめ、軽くサンドイッチとサラダを。
遅めのランチをショッピングヴィレッジで。鶏があちこちで歩いていて、とてものどかだ。そういえばキーウエストも、緑が多くて、鶏がたくさんいたのだった。 海に面したホテル。カクテルを飲みながら、ハワイアンミュージックやダンスを楽しむゲストたち。
ホテルに到着するやいなや、「僕は泳ぐ!」と海へ出る夫。毎度、小学生的、直情的な張り切りだ。「明日はシュノーケリングをするぞ!」「ヘリコプターにも乗るんだ!」と願望は尽きず。落ち着け! 西の果てに太陽が落ちて行く。さて、明日からの1週間を、この島でどうすごそうか。