これでもう、しばらくはこの島を訪れることはないだろう。 とめどなく感傷が去来するに任せて、ひたすらに歩いた。 こんなにも、深く思い入れられる場所に巡り会えただけでも、人生の大いなる煌めき。 昼間は晴れていたのに、夕暮れ時には空はかき曇り、雨がポツポツ降り出した。 荷物を車に詰め込んで、さあいよいよ、さよならマンハッタン。 リンカーントンネルから、ハドソン川をくぐり、ニュージャージーに出る。 迂回する一瞬、一望できる摩天楼を、見逃さない、目に焼き付けて、しっかりと。 やがて雨は、大粒となり、バチバチと叩きつけるように降り注ぐ。 大急ぎのワイパーで窓を拭いながら、ぎゅうぎゅう詰めの思い出を握りしめながら。 もう、本当にありがとう。 やがて雨は止み、雲は晴れ、西日は降り注ぎ、 すでに感傷をあとにして、 新天地を目指して、 どこまでもどこまでも、走ってゆく。
NEW YORK,
NY
さよなら、マンハッタン
MAY 28, 2005