●約5時間のドライブを経て、由緒ある森のリゾート、グリーンブライアへ

2004年は、家を空けることが多い一年だった。例年ならば、冬の休暇は飛行機に乗って遠出をするところだが、今年はもう、飛行機に乗りたくなかった。

とはいえ、どこにも行かずにずっと家にいるというのではつまらない。当初はヴァージニア州シェナンドア国立公園の近くにある温泉宿に泊まろうか、との案もでたが、予約が一杯で1泊しか空いていなかった。1泊ではのんびりできない。どうしたものかと思案していた矢先、夫が知り合いからグリーンブライアのことを聞きつけてきた。

思えばこの夏、ヴァージニア州のリゾート、ホームステッドに行ったとき、そこで出会った人から「グリーンブライアは、ここよりももっと、すてきですよ」と聞いていたのだった。

早速ホームページを開いてみる。

ウエスト・ヴァージニア州、アレゲニー山脈の懐、森のただ中にあるリゾート。そもそも「ホワイト・サルファー・スプリングス」という硫黄泉が沸く温泉地として、1778年以来、内外の人々に知られてきたという。

交通の便が悪かった奥地にも関わらず、夏の避暑地として多くの人々が訪れた。やがて鉄道が敷設され、より多くの人々が訪れるようになり、次第に「森の中の社交場」としての存在を強めていく。首都ワシントンDCからだけでなく、全米はじめ世界各地から、政治家や著名人などが訪れる場所となっていった。

ここはまた、独立戦争以来、米国の歴史に密接に関わりを持ってきた場所でもあり、「アメリカで、最もアメリカ的なリゾート」として、知られているという。

これから先、どれくらいこの国に住むのかわからないわたしたちにとって、アメリカンなクリスマスを過ごすのは、いい経験になるかもしれない。それに、ワシントンDCを離れてしまったら、わざわざこんな山奥のリゾートに出かけることはまずないだろう。これはいい機会かもしれない。

12月24日、クリスマスイブからの3泊4日、思い切って、出かけてみることにした。


出発の数日前に、予約の確認証や案内などが送られてきた。パラパラとめくるうちにも、心が躍る。それにしても、ドレスコードの細かいこと。リゾート全体の空気を上品に保ちたいのだろう、場所や時間ごとに、然るべき服装の詳細が記されている。「まるで校則みたいだね。間違った格好をしてたら、見張り番にピシッと叩かれたりして!」と夫が笑う。

思えばホームステッドに行ったとき、リゾートそのものはとてもエレガントで気品に満ちていたのに、短パンにTシャツ、ジーンズなどをだらしな〜く着用しているゲストも少なくなく、少々興ざめしたのを覚えている。

せっかく、「然るべき場所」に行くのだから「然るべき雰囲気」を味わいたいと言うものだ。わたしとしては、ドレスコードがある方が、気持ちも優雅に引き締まって、「特別な場所」に来ている感じが味わえて、うれしい。

出発の前日は、数少ないワードローブから、何を持っていこうかと思案しながらの荷造りだった。いつもならあっというまに終わってしまう荷造りが、ずいぶんと時間がかかってしまった。


クリスマス・イブの朝は快晴。目的地までは約250マイルだから、休憩を入れても5時間あれば到着するだろう。ハイウェイ沿いはファストフードの店ばかりだから、出発前におむすびと卵焼きを作り、保温ポットに「お吸い物」を入れ、おやつのチョコレートを詰め込み、いざ出発。

DCからはルート66をひたすら西へ向かって走る。シェナンドア国立公園の北の起点であるフロントロイヤルを過ぎたあたりで、ルート81に乗り換え、今度は南へ。延々と続く山並みを眺めながら、牛が草を食む牧草地をすり抜けながら、走る。

暖かければ、どこか見晴らしのいいところでピクニックランチ、といきたいところだったが、あまりの寒さに断念。とはいえ、車のなかで食べるのも窮屈なので、ファストフード店に入り、フライドポテトとサラダだけを購入し、店内のテーブル(レジからは死角)でランチを広げさせてもらう。(いいのか?)

食後も、南北に連なるアパラチアン山脈の麓をひたすら南へ走り抜ける。歌ったり、しゃべったり、口論したり、沈黙したり、おやつ食べたり、歌ったりしているうちに、ルート64が現れた。

ルート64から進路をやや西に移してしばらく走り抜けた先に、ホワイト・サルファー・スプリングスの町(村)が現れた。

ルート66を西へ向かって走る。左手に見えるのはシェナンドア峡谷の山並みの一部。

いよいよ、ホワイト・サルファー・スプリングスに到着!


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